Home 観光・エンタメ シニアがなんだ!カナダで再出発 続・13年ぶりの日本

続・13年ぶりの日本

純子さ んと母校の高島高校前で記念撮影若かりし頃の恋を思い出す

友だちはありがたい。私が日本に来ると知って、都合をつけて再会を喜んでくれる。大阪では、花屋の正子さんに連れられ、日本一高いビル「あべのハルカス」を見物。有料かつ混み合う最上階天井回廊は避け、無料で行ける16階屋上庭園へ。ビル群が地平線まで続く大都市を眼下に見渡す。夜は居酒屋「まいど」で、最近バンクーバーから大阪に戻った韓国料理人のミンジェイ、書家の翼沙さん、そして正子さんと夕食。ひとりで店を切り盛りする女将のマキちゃんが、私の好物である和ニンジンの煮物を覚えていて、そっと出してくれる。阿吽の呼吸で用意される小鉢の数々と、気の合う友人たちに囲まれて、「来て良かった」としみじみ思う。

あべのハルカスは2014年に全面開業した60階建ての超高層ビルシ アトルのスペースニードルより高い地上高300メートルを誇る

1週間の韓国旅行を終えて京都入りした翌日、韓国から一緒に来た韓国系カナダ人のジェームズと琵琶湖雄琴温泉へ出かけた。シニアになると、不動産税や電車・バスの運賃から、旅館、映画館、病院の食堂といったものまで割り引きになる。「今の人生はおまけ?」と卑屈になるが、「シニアの特権」と開き直った。旅館の夕食は近江牛のすき焼きを含む20種類に近いごちそうで、ジェームズも大喜び。生まれ故郷の琵琶湖がきれいに見えた。

料理をしながら客の動きをちゃんと見て気配りする女将のマキちゃん

翌日は私が育った湖西の安曇川町を訪ねる。見慣れない派手な飲食店があちこちにあり、世代交代を目の当たりにして切なくなる。幼なじみの純子さんの運転で、今津町までドライブ。母校の高校では、ふたりで過ごした演劇部時代を思い出す。彼女は交通事故の後遺症を背負いつつ洋服店を経営し、ヨガ・インストラクターの仕事までこなして周りの人を引っ張っていく。「あきらちゃんは耳がよく聞こえないから、同じことを何度も聞き返す。補聴器を替えないと人から見放されるよ」と、相変わらず世話好きだ。

高校 時代の同級生が熱海で営むまぼろし博覧会怪しげだがなぜか若い女性に大人気

1日観光バスでジェームズに京都の名所を案内後、新幹線で網代温泉へ。老舗「平鶴」で1泊したが、畳に座っての夕食が苦痛だった。周りを見ると30センチほど高くなるシニア向けの椅子を使う方々を発見。次は自分も使おうと思う。熱海で博物館を営む高校時代の親友も加わって、互 いの近況を交換。今でもいろんなことに挑戦する彼や純子さんは魅力的だ。こちらののんびりした引退生活と比べると、「自分は頑張っていないかな」と心が揺らぐ。

大好きな日本のコンビニではコーヒーが1杯ずつ作れるドリップバッグフィルターをゲット

友人家族の世話で八ヶ岳南麓、山梨県北杜市の山荘にも泊まった。この辺りは人口わずか5万人弱と少ないが、澄 んだ空気や日本一長い日照時間に恵まれ、人気の別荘地となっている。地元農家の名前入り有機栽培野菜の売店や、新鮮な食品がそろう大きなスーパーを訪れると、値段も安く、地元の人たちの食生活がうらやましい。バンクーバーでは味わえないような回転ずしや手打ちそばに舌鼓を打ったら、大浴場、アイリッシュ・バーへ。楽しいリゾート生活を体験できた。各地に住む友だちのおかげで、日本文化の心地よさを再認識した旅となった。

帰途ヒルトン成田に1泊新勝寺や成田山公園散策が楽しい

[カナダで再出発]

 

滋賀県生まれの団塊世代。京都産業大学卒業後日本を脱出。ヨーロッパで半年間過ごした後シアトルに。在シアトル日本国総領事館に現地職員として39年間勤務。政治経済や広報文化などの分野で活躍。ワシントン大学で英語文学士号、シアトル大学でESL教師の資格を取得。2013年10月定年退職。趣味はピックルボールと社交ダンス。