在シアトル日本国総領事館に現地職員として39年間勤務した後に、2013年定年退職した武田 彰さんが綴るハッピー・シニアライフ。国境を超えるものの、シアトルに隣接する都市であるカナダのバンクーバーB.C.で過ごす海外リタイアメント生活を、お伝えしていきます。
ハリソン温泉
4月に相棒ジェームズの誕生祝いも兼ね、仲間5人で久々にハリソン・ホット・スプリングス・リゾートを訪ねた。バンクーバーからは国道1号線で東へ、2時間弱のドライブで着く。途中、韓国系夫婦が経営するアボッツフォード・レクリエーション・センター内のカフェに立ち寄り、巻き寿司で腹ごしらえ、さらにジムでピックルボール。オーナー夫婦も店番を交代しつつゲームに参加するのが通例だ。少し遠回りとなるが、ここから北の州道7号線を通ると、雪を被る山々の絶景が広がり、思わず何度も「アッ」と声が出る。
この温泉リゾートは、1886年に浴場を備えたセント・アリス・ホテルとしてオープンしたものの、1920年に火事に遭い再建、名前が変わった由。近くの源泉はミネラルの含有量が極めて高く、デトックス作用があるらしい。朝食付きプロモ・パッケージを予約、と思ったら手続きを間違え、結局は朝食抜きとなってしまったが、気を取り直しチェックイン。部屋に備わったバスローブに着替えて、いざ温泉へ。 より熱めの湯も屋内にあるものの、やはり気分が盛り上がるのは露天風呂。渡り廊下を隔てて大人用と親子用に分かれており、大人用はシニア客ばかり。日本の温泉と違い「シャキっと感」がなく、まるで温水プールのようだが、32~35度の温かさが心地良い。時折雨が降るも、頭が濡れるだけであまり気にならない。温水から出ると、濡れた体に10度の寒さがこたえる。
ホテル内レストラン、ザ・コッパー・ルームでの夕食とダンスも目的のひとつ。客席中央のダンス・フロアで、ボーカルも交えた4人編成のザ・ジョーンズ・ボーイズが奏でるダンス音楽に合わせ、ボールルーム・ダンスができるのだ。食事は前回の来店時よりうんと値上がりしていてびっくり。限られたシニアの懐具合を憂う。
翌朝は、ホテル内カフェの朝食ビュッフェが以前に比べ品数が減っていたため、近くのレストランに出向く。チェックアウトを終え、湖畔のビーチ沿いを散策。Esplanade Ave.にはレストランやショップなどが約500~600メートルにわたって並ぶ。建設中のコンドミニアムがあり、興味本位に売り値を見ると、中央に位置する2寝室が100万カナダ・ドル、少し歩いた端の2寝室が76万カナダ・ドルから。仲間内6人で共同購入すれば、各オーナーが2カ月ずつ使えるという案が出るなど、楽しいひととき。犬の散歩をしていた地元シニアに話を聞くと、ここに家を買ってバンクーバー郊外から6カ月前に引っ越したと言う。
山々に囲まれた美しいハリソン湖。夏はカヤック、ジェットボートなどのオプションも。治安は比較的良く、掃除も行き届いている。公共トイレも清潔で、市当局の心配りに感謝。ゴミ箱がひっくり返されるバンクーバーの通りと比べ、「こうあるべき」と新鮮な思いがした。