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シニアの金遣い〜シニアがなんだ!カナダで再出発

在シアトル日本国総領事館に現地職員として39年間勤務した後に、2013年定年退職した武田 彰さんが綴るハッピー・シニアライフ。国境を超えるものの、シアトルに隣接する都市であるカナダのバンクーバーB.C.で過ごす海外リタイアメント生活を、お伝えしていきます。

シニアの金遣い

ショッピングを好きな人、嫌いな人、どうでもいい人もいるであろう。自分も好きではないが、コストコは例外。まず、身体に良くないと知りつつも開業から40年値上げされていないという1ドル50セントのホットドッグが好物だ。次に引かれるのは洋服類。好みの服を見ると、いつか10代の隣人に「おっちゃんはいつも同じ服」と言われ、はっとした記憶がよみがえり、値段の安さも手伝ってつい買ってしまう。着心地の良いジャージやトレパンなどを愛用できるのは、退職後、デザイナーズブランドなど必要としなくなったシニアの特権? それとも悪趣味? 茶色の卵1.5ダース、有機牛乳1ガロン、バナナ1房、アボカド半ダースなど食品も買っていざ支払いになると100~200ドルを超え、こんなに買うはずじゃなかったとはしゃいだ気分も終わってしまう。

昼食に、たまにとんかつ屋の「SAKU」(写真向かって右)に出かける。「山頭火」のラーメンコンボもお気に入りの一つだが、近頃はこんな普通の昼食でも税金とチップを入れると2人で100ドル近くかかるので、なるべく外食は控えている

悲しいかな、食べることは我がシニアライフの大きな喜び。外食は楽しいし、次々と新商品を販売するベーカリーの前を通ると磁石のように引き寄せられパンやケーキをいくつも買ってしまう。それにしても、決済端末の導入でテイクアウトでもチップをあげないと気まずい気分にさせられるのは癪なものだ。ノーチップだと従業員に気の毒だと頭をよぎり、しぶしぶ最低%(それでも普通10~15%)を選ぶ。時には50セントや1ドルと金額を入れてささやかな抵抗を試みるも、「無し」の選択はどうしてもできない。根がせこい自分や収入が限られるシニアにとっては嫌なシステムが台頭したものだ。

ダウダウンタウンにある老舗のステーキハウス「ゴッサム(Gotham)」のハッピーアワーは、でかくて柔らかいステーキサンドがCA$21と格安。いつも「A1ステーキソース」をつけてもらう。我が贅沢三昧はこの程度と、せこい

退職前はお金をセーブする癖をつけていた。同僚がバケーションに行く話などを聞いても、自分には余裕はないと旅行は控えてきた。若い頃、いろんな国を旅したことがブレーキになってくれたようだ。おかげで退職後は普通に生きていく目途が立った。余命が徐々に減っていくこともあり、独り身の自分はもう貯金をする必要を感じなくなった。昔のように無料の駐車スポットを探さなくなったし、ちょっとしたものなら躊躇しないで買ってしまう。おまけにカナダドルは米ドルより安く、米ドルでクレジットカードの決済ができる自分はディスカウントを得た気分になり、消費(無駄遣い?)が進んでしまう。

毎冬、出かけるワイキキは夕焼けはもちろん、日の出も乙だ。夜明けは6時半前後だが、朝が早いシニアはあまり気にならない。ダイヤモンドヘッドに登頂して見るのもまた格別。兄弟が来たらレンタカーを借りて遠出もしたい

ハワイのロコモコ、ハヤシライス付。こんな日本食っぽいのが食べられるのもワイキキの魅力。でも食べたい物は大抵身体に悪いのものだ ▶︎
我がエッセーの読者は、私の引退生活を「さぞかし優雅なこと」と感じておられるかもしれないが実情は違う。生活費が限られるシニアは旅費も節約を余儀なくさせられるのは言うまでもない。たとえば、寛大な友人からタイムシェアを安く貸してもらったり、最安値のフライトを探したりなど努力がいる。また、出費を自身の健康状態と鑑みながら調整していく必要もある。

我が家から車で30分東、コキトラム市とバーナビー市の堺にあるコリアン・タウンにある韓国料理店で相棒ジェームズの娘一家と食事をした後、カフェに立ち寄るのがわれらの誕生日祝いの通例になった。この地域には日本人の口にも合いそうな甘さ控えめのケーキを出すカフェが数軒あり、どれもうまそうで目が移る

常に健康上の不安や問題を抱えるようになった昨今、日本の家族と会うための一時帰国も含め、一体いつまで飛行機を利用した旅ができるだろうかと不安になる。6月には50年ぶりのヨーロッパ旅行を計画しているが、果たして首尾よく旅行できるだろうか。体調を崩すと治るのに時間がかかるようになったり、サプリメントや抗生物質軟膏、腔内保湿ジェルを始め一連の助っ人道具が年々増えたり、6カ月先や1年先に自分の健康がどうなっているかわからないのだ。

バンクーバーのコストコのメニュー。1.50ドルの値段は「永遠」に変わらないというホットドッグの他、バンクーバーにはシアトルにはない、なぜかおいしいポテトフライにカナダ料理のプーチンが付くメニューがあり、ピックルボールで腹をすかして立ち寄ると小さな幸せを感じ
さほど寒くならなかった冬も終わり、濃いピンクの関山桜が春たけなわを告げる晴れた日、散歩に出かけると、気温と共に気分も上昇。そうだ、次のハワイ旅行は思い切って日本に住む兄弟も招待してみよう。


3月末のまだ寒いうちにソメイヨシノやアケボノ種の桜がぱっと開く。春が来たのかなと思う間もなくひと雨降り、あっという間に散ってしまう。続いてチューリップが咲き、耳当てがいらない気候になる4月半ばには遅咲き桜のカンザン種が我が家の周りに開花、春の気分をもう少しだけ永らえてくれる。写真右上はコールハーバーのウォーターフロントに咲くアケボノ種。右下は我が家の周りに咲くカンザン種。左はジョージ・ウェインボーン公園のチューリップ

武田 彰
滋賀県生まれの団塊世代。京都産業大学卒業後日本を脱出。ヨーロッパで半年間過ごした後シアトルに。在シアトル日本国総領事館に現地職員として39年間勤務。政治経済や広報文化などの分野で活躍。ワシントン大学で英語文学士号、シアトル大学でESL教師の資格を取得。2013年10月定年退職。趣味はピックルボールと社交ダンス。