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いい加減にやる癖〜シニアが何だ!カナダで再出発

在シアトル日本国総領事館に現地職員として39年間勤務した後に、2013年定年退職した武田 彰さんが綴るハッピー・シニアライフ。国境を超えるものの、シアトルに隣接する都市であるカナダのバンクーバーB.C.で過ごす海外リタイアメント生活を、お伝えしていきます。

いい加減にやる癖

「タケダさん、ユー・ウォーリー・トゥー・マッチ」。シアトル勤務時代、ベルビューのマッサージ師、Yさんに通った時に言われた。現役の頃は何かにつけ心配したものだったが、退職後は「今日は何か心配事あり?」と自分に尋ね、「何もない」と確信してホッとする。今は趣味と食べることが日常。たまに旅行に出かけて惰性的生活を破る。大したイベントがないのにかまけて、毎日の雑用はいい加減にしてしまう。

◀︎ かなか開けられないスーパーのビニール袋。ネットで調べたら、両手のひらで挟んで、もみもみすれば良いとのこと

年々、簡単な動作でも前よりせかつくようになった。「これを急いでやらないと時間がなくなる」という思いが頭にあり、「急いては事をし損じる」こと度々。たとえば、スーパーに備わるビニール袋や絆創膏の包みを素早く開けようとすると意外に難しい。勝手にアップデートしてしまうパソコンや携帯電話への対応、しょっちゅう出てくる詐欺まがいの情報の処理に時間がかかり、くやしい思いをすることも。

絆創膏は開け口が付いているものと、付いていないものがあるので要注意 ▶︎

車の運転にしても、以前は普通にできたが、今では集中しなければと構えてしまう。ついズルをして相棒のジェームズに代行してもらうことも。こうなると何をするのも億劫に。自己分析すると、「この動作・作業は前に失敗したな」と感じる時ほどグズグズする。気持ちばかり焦って、行動が付いてこないのだ。

この「はやる気持ち」は、ピックルボールにも影響する。返球前に一瞬間を置き、コートのどこを狙えば相手のミスを誘えるかなどを考えるのがコツなのだが、打ち返すだけで精一杯。また、ボールに勢いがある若い相手だと、受ける側は悲惨である。

◀︎ 上式の小型エアーフライヤー付きオーブントースターを使うわが家。オーブン料理で「上段に野菜を、下段に肉を」などと途中でわかっても、1段しかないので不可能。レシピは最初にひと通り読んでから調理を始めないと、途中でおかしくなりがち

商品の組み立てにしても、説明書を読むのが面倒なうえに、昨今のハイテク機器などは仕様が複雑でひと苦労。説明書は字が嫌になるほど小さく、何ページもあるが、ちゃんと読まないと試行錯誤を繰り返す羽目になる。非英語圏製だと、英語がさらにわかりにくい。

バンクーバーで急に淡いピンクの桜が街中で開花。うれしくなるのは皆同じ

何にしても「これをやらなければ次に進まない」とあきらめ、取りかかるしかない? あるいは、同じ「煩わしい」作業でも、ポジティブに挑戦する気持ちに切り替えればいい? ピックルボールではボールが来るたびに気を張る? 要はディテールにこだわること、なのかもしれない。工芸家などは、その道を究めるために細部まで気を配り、一瞬一瞬が勝負。毎日の些細なことでそれをやっていては疲れそうだが、そういう考えが自然に身に付くようになればいいのかな。

週1度の社交ダンス。まさか自分も踊るシニアの輪に加わるとは夢にも思わなかった

バンクーバーの日本語月刊誌『ふれいざー』に、こんな記事を見つけた。「人間は意図を持たずにいると、習慣で昨日までの自分を繰り返し昨日までの解釈と捉え方で現実を過ごすので、気が付けば同じ考え、同じ感情、果ては同じ経験を体験し続けます」。日々、自分の考えに意識を向け、自分のためになるポジティブな命令を身体へ送ることが大事という。まさに老後の心得?

簡単なことでもマルチタスクは失敗のもと。いつだったか、右手にコーヒー、左手に水筒を持ち、台所からデスクに移動した際、利き手でない左手の水筒を先に置こうと判断したことで、右手のコーヒーが少し傾いてしまい、結局こぼしてしまった
商品の説明書は長たらしくて、読みたくなくなる。上図のコンビネーション・ロックの説明書に比べ、下図のイケアの説明書は図式でわかりやすい

滋賀県生まれの団塊世代。京都産業大学卒業後日本を脱出。ヨーロッパで半年間過ごした後シアトルに。在シアトル日本国総領事館に現地職員として39年間勤務。政治経済や広報文化などの分野で活躍。ワシントン大学で英語文学士号、シアトル大学でESL教師の資格を取得。2013年10月定年退職。趣味はピックルボールと社交ダンス。