在シアトル日本国総領事館に現地職員として39年間勤務した後に、2013年定年退職した武田 彰さんが綴るハッピー・シニアライフ。国境を超えるものの、シアトルに隣接する都市であるカナダのバンクーバーB.C.で過ごす海外リタイアメント生活を、お伝えしていきます。
シニアの旅はつらいよ
5月初め、カナダを本拠とするウエストジェット航空のプロモーションをきっかけに、一度は行かねばと思っていたカナダ最大都市、トロントを相棒ジェームズと共に訪ねた。到着時は雨で、気温も6°Cと肌寒い。ダウンタウンのユニオン駅まで「UPエクスプレス」で25 分、さらに地下鉄に乗り換え、ホテルのあるカレッジ駅で降りる。今回の宿、コートヤード・バイ・マリオットは中心から少し離れるが、比較的安く交通に便利。
「カナダのニューヨーク」と称されるトロントは、バンクーバーよりも都会的だ。速足の群衆に遅れまいと、ダウンタウンを歩き回る。にぎわいを見せるのは、小規模ながら東京の渋谷交差点やニューヨークのタイムズ・スクエアにも似たヤング‐ダンダス・スクエア。夜になるとネオンや大型ビジョンがきらびやかだ。でも、大都会をイメージする旅行者には物足りない?
さて、趣味のピックルボールができる場所を探すのも、わが旅の醍醐味。所変われば品変わる。バンクーバーと違い、冬が寒い土地だけに、まだ誰も屋外でプレーをしていない。ダウンタウンには屋根付き通路が設けられ、中でジョギングする人も見かけた。自分たちは「カナダのカリフォルニア」と呼ばれるバンクーバーに住めてラッキーだと思う。
旅の最終日になって、やっと晴れた。友人の案内で、いざナイアガラ滝へとドライブすること1時間半。実際に見るのは初めてだ。でも期待が大き過ぎたのか、「これが?」とがっかり。周りの土産物屋もいかにも観光客向けで、興味をそそられない。ボート・ツアーで水上からの滝見が正解だったか。
パンデミック以降、めったに旅行をしなくなったせいか、いつも何か忘れる。携帯品は増える一方。たとえば口腔ケアにしても、 ナイトガード、歯間ブラシ、ドライマウス用タブレットがあり、加えて目薬、充電ケーブル、ノイズ・キャンセリング耳栓など数え切れない。使い慣れた枕のないホテルでは、寝ると首や肩が凝る。ビデ付きトイレがないのもシニアには致命的。空港の無人化したチェックインにもまごつく。預け入れ荷物の札をどう付けたら良いのかわからない。
帰りのフライトで初めて経験したのが、耳の違和感。着陸態勢に入り高度が落ちると、エンジンを切っているのかと思うくらい、雑音が消えて急に静かになった。耳の痛みもひどい。飛行場に近付いたら、それも落ち着いた。なるほど、加齢により気圧の変化に鼓膜の奥の中耳が対応できないのだ、とわかる。ヨーロッパや日本に平気で何度も行く同年配の友人は、どう対処しているのだろう。風邪を引いたり、けがをしたりで旅が楽しめなくなる確率が高いシニアは、旅の予定が立てにくくなってつらい。