在シアトル日本国総領事館に現地職員として39年間勤務した後に、2013年定年退職した武田 彰さんが綴るハッピー・シニアライフ。国境を超えるものの、シアトルに隣接する都市であるカナダのバンクーバーB.C.で過ごす海外リタイアメント生活を、お伝えしていきます。
コロナにかかってしまった
冬が長い。4月半ばというのに家の中でも手足や耳が冷たい。秋に南下して冬が終わるまで暖かい土地で過ごす「スノーバード」シニアたちがねたましい。と、嘆いていると、10年ぶりに風邪を引いた。3週間経って治ったと思いきや、今度はコロナにやられた。もうどこへ行くにもマスクなし、コロナ前の状態に戻って良かったと喜んでいたのに。
最初に異変を感じたのは、ピックルボールのプレー時。疲れ方がいつもと違った。その晩は社交ダンスも楽しんだが、床に就くと夜中に突然、頭や胸の中にかつてない不快感が広がる。健康が売りの自分は「大したことない」と、翌朝も屋内コートでピックルボールを2時間強プレーするも、やはり疲労感は抜けない。これはおかしいと家庭用検査キットを試したら、初めて線が2本出て陽性が確定し、ガックリ。
すぐに社交ダンスやピックルボールの仲間に連絡したが、自分もかかったとの知らせがなかったのが救い。寝室での隔離を開始し、検査で陰性だった相棒ジェームズが世話をしてくれる。呼吸困難までは行かないものの、翌日から3日間、38度前後の高熱とだるさが続いた。友人たちが食事を差し入れてくれたのはありがたい。折しも日本語チャンネルのテレビジャパンで、シェアハウスの同居者たちが互いに助け合うというドラマを観たところだったが、それも一案か。でも、逆にひとり住まいなら、軽症の場合は隔離なく家中を自由に使えて便利かも。
コロナにかかったあとはどうする? 当地では昨年11月から「熱が下がり、通常の行動ができれば職場復帰、外出もOK」と、規定が緩和されているようだ。さらに調べると、症状が出始めるか検査で陽性になってから5日間は隔離、6~10日間はマスク着用のうえ外出OK、10日目からは大方伝染力がなくなるので通常の生活が可能、との目安が。しかし、連日の検査では陽性。一体いつまで? 実は回復していても、抗原検査だと数週間、PCRやNAATだと最高3カ月まで陽性反応ということもあるのだとか。体内のウイルスに侵された細胞が体内から出る「ウイルス排出(viral shedding)」現象によるものだそう。
4日目になると、倦怠感がスッと抜け、熱も37度以下に落ち着いた。もう治った? 近くの公園で桜祭りが催されていたので、マスクをして見物に出かけた。しかし10日目、順調に回復し、もう大丈夫と思われた矢先、起床時に何かすっきりしない、しこりのようなものを感じる。熱はないようだ。友人に聞くと、後遺症が長引く例もあると言う。困ったことに、臭覚・味覚が低下し、半分程度しか回復しない。何を食べてもおいしくない。それなら、揚げ物や甘い物は避け、まずい(?)健康的な食事を試すチャンスと居直る。
17日目、検査結果はついに陰性。咳も出ず、夜はよく眠れるようになった。臭覚・味覚も元通り。ようやくピックルボールを再開した。自分もそろそろ「シニア」を通り越して「お年寄り(elderly)」の域に入ってしまったのかもわからないが、徐々に普通の「シニア」に戻れることを願ってやまない。