Home 観光・エンタメ シニアがなんだ!カナダで再出発 今を生ききれるか

今を生ききれるか

退職して、日ごとに近づく「人生の終着駅」という厄介者をどうすれば有意義に対処できるかが、多くのシニアにとって共通の課題となる。退職前は一体、この自由をどう過ごせばいいのかずいぶん案じたものだ。今でこそ2つの趣味ができて楽しく過ごしているが、それでも「これでいいのか」としばしば疑問に思うのは私一人ではあるまい。

多くのシニアは体のどこかが悪い。そのうえ、同年配の友人や著名人の訃報を聞くにつけ、死をより身近に感じるようになる。そしてみんながいう、今は「1日ずつ精いっぱい(One day at a time)」生きている、と。

哲学的に考えれば、過去は過ぎ去ったのでもう無い。未来はまだ来ないからどうなるか分からないし、無いかもしれない。結局あるのは「今」だけ。「今」にのみ我が人生がある。だが問題はそれを、一瞬、一瞬で意識し続けて日々を過ごせないこと。

では「今」をいかに充実させたら良いのか。簡単な例を挙げれば、我がリタイアメントの日課となっている趣味のピックルボール、社交ダンスなどのいわゆる「パフォーマンス」をする時にポイントで神経を集中させれば、何気なくやっているよりはるかに良い結果が生まれることが分かる。そういえば、過去に自分が輝いたと思う瞬間には、意識せずとも精神を集中させていた。

では集中力を高めるにはどうすれば良いか。早速ネットでめぼしい記事を探したら、ある記事が目に留まった。「集中力が増す3つの仕掛け」というタイトルに惹かれて読んでみると、「目の前のことに全力投球する」「ライバル意識を捨て損得勘定抜きに」「コツコツ努力するのではなく、一気に高い目標を掲げる」という考え。平泳ぎの世界記録を塗り替え、北京五輪で金メダルを獲得した北島康介選手は、このアドバイスに従ったのだそうだ。

自分もちょっとやってみようと、身近なところで、日課の腕立て伏せ。20回やろうと思ってやると、18回やって「あともう少し」と思った瞬間、自然と気力が弱ってしまう。しかしこれを50回、さらに100回という大きな目標を意識すると、18回で気が抜けることがなく、すんなり30回できてしまったのだ。

68歳の退職シニアの私は、今から総理大臣になろうと大志を抱くことはおそらくなかろうが、今すでにやっている身近なことでも、その瞬間に最大限の力を出そうと意識して努力すれば、もっと充実した残りの人生が送れるかもしれない。

[カナダで再出発]

武田 彰
滋賀県生まれの団塊世代。京都産業大学卒業後日本を脱出。ヨーロッパで半年間過ごした後シアトルに。在シアトル日本国総領事館に現地職員として39年間勤務。政治経済や広報文化などの分野で活躍。ワシントン大学で英語文学士号、シアトル大学でESL教師の資格を取得。2013年10月定年退職。趣味はピックルボールと社交ダンス。