1年かかった永住カードの更新がやっと終わったのを記念に、10年ぶりにニューヨークを訪れた。往きの飛行は5時間半。年齢がかさむのとエコノミー席が増々狭くなるのとで長い飛行がきつい。5時間半でこれなら日本行きはさぞ辛かろうという思いが脳裏を横切る。
幸運なことに、セントラルパークすぐ南に取った宿舎の並びに、超新鮮で選りすぐったメニューのバッフェと出来立てのペイストリーが並んだ食堂を見つけ、1週間毎日通って野菜と果物中心の朝食を摂り、栄養摂取規定を満たした気分で1日をスタートさせた。
若い時は「冬のセントラルパークが美しい」と粋がって、厳寒の中、厚いコートに耳あてをしてアッパーイーストを歩いたのを覚えている。しかし今は4月末、暖かい春日和が続いて「この方がずっと楽」と思った。以前はマンハッタンの、北はメトロポリタン美術館から南は国連ビルまで平気で歩けたが、一緒に旅をしたシアトルの旧友(69歳)が幸か不幸か私と同じ坐骨神経痛を抱えていたこともあって2人して地下鉄を利用。シニア割引のため往復切符がわずか2.75ドル。他にも美術館などでシニア割引が利き、「ビバ・シニア!」と単純に喜んでいる。
歩き回らなくても楽しめるブロードウエイ・ミュージカルは今回の旅のハイライトの一つ。嬉しいことにタイムズスクエアには当日券が半額で買える窓口が今でもあり、開演時間が迫った午後5時前後でもかなりいい席がほとんど待たずに買えた。チケットラインで待っている間も外国や地方から来たという隣の人と会話が楽しめて退屈しない。連れがおおすすめの『She Loves Me』、『王様と私』、『Something Rotten』を初めて鑑賞し、最後に私の最も好きな『オペラ座の怪人』を観た。いつも思うがブロードウエイ・ミュージカルの役者はみんな本当にうまい。長時間のセリフや歌詞を覚えているだけではなく、いともたやすく歌って踊っているように見える。若い頃には考えもしなかったが、「陰にはさぞかし大変な努力があったのだろう」と感激を味わった。
タイムズスクエアや「グラウンド・ゼロ」にも行ったが、観光客が氾濫してまるで東京のように混んでいるのには辟易。むしろセントラルパークや最近完成した「The High Line」と称す、マンハッタンの西南部にあった貨物鉄道を再利用して、草花や彫刻をあしらった南北20ブロックにも及ぶ遊歩道の方が新鮮味があった。
旅を終えてバンクーバーのわが家に帰るとほっとした。「人混みと喧騒の大都会は時たま訪れればよい。住むにはやはりシアトルやバンクーバー程度の都会の方が自分には合っている」と再認識させられる旅だった。
[カナダで再出発]