航空博物館では、2022年2月6日(日)まで「ストレンジャー・ザン・フィクション:航空宇宙医学の奇想天外サイエンス」を開催中! 同館PRマネジャー、テッド・ハッターさんに開催に至るまでの裏話を交えて注目すべきポイントを教えてもらいました。
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The Museum of Flight
9404 E. Marginal Way, Seattle, WA 98108
開館時間:10am〜5pm
料金:一般$25、65歳以上$21、5〜17歳$17、4歳以下無料 ※一部アトラクションは別料金
問い合わせ:☎️206-764-5700、info@museumofflight.org
詳細:www.museumofflight.org
*ミュージアム・パス利用可
クラシックなアメコミ風アートがあちこちに
今では当たり前の飛行機移動や宇宙探索だが、医師や科学者の努力の賜物であることを忘れてはいけない。人体が地上から離れた場所でどのように反応するかを自らの身体で研究、実験し、危険を顧みずチャレンジし続けた彼らは、マーベル・コミックに出てくるようなみんなのヒーロー! という発想で、航空博物館専属グラフィック・デザイナーのマンディー・フェーバーさんが、1930年代後半から40年前半までのアメリカン・コミックを模したデザインで展示空間を演出。壁紙もフェーバーさんが徹底的にこだわり抜き、描いたものだ。
限界へ挑戦するための4つのキーワードとは
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医師や科学者は、どのような驚きの実験を行ったのか。「ハイアー(高く)」、「ファスター(速く)」、「ファーザー(遠くへ)」、「フューチャー(未来へ)」の4つのテーマに分けた展示で解説している。米空軍大佐で航空医学研究者の故ジョン・スタップ氏は、稼働中のジェット機から脱出する可能性を考え、人体はどの程度の風速にまで耐えられるのかという実験を自ら買って出た。ロケット用の地上レールに設置された装置に座り、シートベルトとヘルメットを装着して時速632マイルまで加速。眼球からの出血など、危険な実験となったが、戦闘機の速度域における安全性の確保に大きく貢献した。
テーマソングも作っちゃった!
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展示スペースにはBGMが流れ、フューチャリスティックなサウンドが、なんともマッチしている。実は、館内のコックピットをミュージック・ビデオ撮影に使ったことのある地元シアトルのミュージシャン、レニ・ラマダンさんがエキシビションのために無料で提供した楽曲だ。テッドさんによると、このように博物館施設を使用したメディアやアーティストが展示への協力を申し出ることは多々あるのだそう。
大人から子どもまで、誰もがワクワクしっ放し
常設展もお見逃しなく!
館内は「レッド・バーン」と呼ばれるボーイング社創業当時の社屋を含む東館と、屋外に飛行機の実物が並ぶ「アビエーション・パビリオン」のある西館の2棟に大きく分かれる。全て回るのに、早足でも3時間以上かかるだろう。館内を見回っている知識豊富なボランティア・スタッフに声をかけ、無料ツアーをしてもらうのもおすすめだ。ガラス張りで日差しがたっぷり入る「グレート・ギャラリー」には、上にも下にもさまざまな戦闘機や旅客機が展示されている。一部は実際に操縦室に座ることができ、記念撮影もバッチリ! ほかにも宇宙、第二次世界大戦など、さまざまなテーマのギャラリーがそろい、興味深い展示物が盛りだくさん。
美術品愛好家でもあったドイツ系アメリカ人の富豪、チャールズ・フライ、エマ夫妻によって1952年に創設されたフライ美術館。ローカル・アーティストのブライアン・フーさんが、お気に入りの理由を語ります。
Frye Art Museum
704 Terry Ave., Seattle, WA 98104
開館時間:11am〜5pm 定休:月火
料金:無料
問い合わせ:☎️206-622-9250、info@fryemuseum.org
詳細:https://fryemuseum.org
*無料入館日あり
展示スペースは広さが重要?
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古典から現代アートまで、社会的、政治的な要素を含む作品を展示。19、20世紀のアメリカやヨーロッパを中心としたコレクションを約半年ごとのローテーションで公開している。また、現代アートは期間限定の特別展も定期的に開催する。そんなフライ美術館を愛してやまないブライアンさんは、美術館はサイズ感がポイントだと話す。急いで全部回らないと、というプレッシャーを感じることのない、程良くコンパクトなフライ美術館は、ひとつひとつのアートに向き合い、自分のペースで観られるところが良いそうだ。
順路は自分で決めよう
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一般的に、ミュージアム館内には順路を示すサインや矢印があるものだ。しかし、この美術館にはそういった物が一切ない。たまたま展示内容のせいかとも思ったが、ブライアンさんはそうではないと言う。「あの作品をまた観たいと思えば、そこにいつでも戻れる。異なるエキシビションを行き来することで、新しい発見につながることもあります」。美術館でひとり逆流するのは少し気が引けるものだが、ここではその緊張感がない。
バーチャルも良いけれど、美術館は足を運んでこそ
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新型コロナウイルス感染拡大の影響で、昨年からバーチャル・ビューイングやオンライン・ツアーを始める美術館が増えた。多くのミュージアムが再オープンを果たした今、改めて直接訪問する理由をブライアンさんに聞いてみた。デジタルではできない楽しみ方のひとつが、「観ている人を観る」ことだと言う。「絵や彫刻に見入る人を観察するのも美術館来訪の醍醐味です」と語るブライアンさんは、何回も同じ美術館に通う。そうすると、どんな人がいつ、どの展示に興味を持つのかがわかり、自分の作品へのインスピレーションを得られるとのことだ。
無料であることは、静かな意思表示
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やはり入館無料ということがフライ美術館の最大の特徴であろう。特定の日だけ無料になるミュージアムは多々あっても、完全無料は珍しい。「誰でも気兼ねなく来られる居心地の良い場所。それが私にとって、良い美術館の定義です。もちろん、無料であることは大きな要素。アートはより多くの人の目に留まり、話題に上ることに意味があると思っています」と、ブライアンさん。地元アーカンソーからシアトルに越してきたばかりの頃、ブライアンさんは居場所を求めるようにフライ美術館をよく訪れたそう。
ブライアン・フー(Bryan Fu)■
シアトル在住のゲーム・アーティスト兼アニメーター。2005年にプロとして独立し、マイクロソフトやディズニー、任天堂などの大手エンターテインメント企業のゲームとキャラクターデザインに携わった経験を持つ。現在は株式会社クーアプズで、リード・アニメーターとして活躍中。www.bryanfu.com
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北米の現代アート作家の個性が爆発
開催中の展示
■リーセント・アクイジションズ・イン・コンテンポラリー・アート
開催中〜2022年1月23日(日)
ローテーション展のひとつ。アイデンティティーをテーマにした作品や、自由な表現の現代アートを主に展示する。シアトルで活躍中の日系人アーティスト、コー・カーク・ヤマヒラ氏の作品もコレクションの一部。
■ドュエイン・リンクレーター:マイマザーサイド
開催中〜2022年1月16日(日)
カナダ出身のドュエイン・リンクレーター氏の作品は、現代的な暮らしと、先住民族の生活様式や文化の間で起こる矛盾が主なテーマ。彫刻やビデオ、リネンを使ったプリントなど、あらゆるジャンルの作品が並ぶ。