平昌オリンピックをテレビで楽しんだ方も多いのではないでしょうか。冬季五輪の目玉はフィギュアスケートですが、今回私がいちばん注目したのはカーリングです。6大会目にして初めてメダルを手にした日本代表女子以上に、米代表男子が気になっていました。ちょうど1年前、エバレットでカーリングの全米選手権が開かれた際に、たまたま目の前で試合をしていたのが、今大会に米代表として出場した「チーム・シュースター」だったためです。マイナー・スポーツのせいか、平日の会場はガラガラ。そのおかげで、選手の会話も聞こえる最前列に座ることができました。
いざオリンピックが始まると、見覚えのある選手が話題になっているではありませんか! 立派な口ひげが印象的なチーム・シュースターのマット・ハミルトン選手。団体戦の前に、妹のベッカさんと混合ダブルスに出場し、赤い帽子をかぶった姿がスーパーマリオにそっくりだとSNSでトレンド入りです。おかげでエバレットで見たチームが五輪に出ていることを知り、俄然と興味が湧きました。
チームの司令塔(スキップ)を務めるのは、今大会で4度目の五輪出場となったベテラン、ジョン・シュースター選手。別のスキップが率いるチームの一員として出場したトリノ五輪では銅メダルながら、それ以降、自らがスキップとして出場したバンクーバー五輪では最下位、ソチ五輪も9位で予選敗退。いずれも、大事な場面で自身が犯した安易な投げミスが原因で、「自滅男」のレッテルを貼られてしまいます。
その結果、五輪強化プログラムからも除名。しかし、金メダルの夢は捨て切れず、同じ境遇の仲間を集めて新チーム、「The Rejects(落ちこぼれ組)」を結成します。悔しさをバネに、2015年の全米選手権で優勝すると、再び強化プログラムに招聘され、2017年には平昌への切符を獲得。
そうして臨んだ4度目のオリンピック。10カ国総当たりの予選では2勝4敗と、またしても予選敗退の崖っぷちに立たされます。残り3試合はカナダ、スイス、イギリスの強豪ぞろい。しかし、ここからまさかの3連勝で準決勝へ。試合直後のインタビューでは声を詰まらせました。
再びカナダを破って決勝戦へ進むと、予選で大敗を喫したスウェーデンと対決。一進一退のあと、同点で迎えた第8エンドでは、なんと「自滅男」が敵のストーン2つを弾き出し、味方ストーンを5つ残す奇跡の一投を見せます。これで汚名返上どころか、米カーリング史上初の金メダル獲得。「やっと2人の息子に誇りに思ってもらえる映像が残せた」。シュースター選手の顔には安堵と喜びが入り混じっていました。
All Photos by Misa Kanaoka