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高齢者の夜間の入れ歯装着と肺炎

最新の日本人の死因のトップは、ガンで、以下、心疾患、脳血管疾患ですが、こと高齢者で要介護者の死因で最も多いのは肺炎と言われています。その中でも口の中の細菌が唾液等に混ざり、誤って肺に入り込んで発症する「誤嚥性肺炎」の割合が高いと言われています。この誤嚥性肺炎を防止するのに重要なのが、入れ歯を含めた口腔内清掃の徹底だということは、これまでもこのコラムで何回か取り上げてきました。最近日本の研究で、高齢者の夜間の入れ歯の使用と誤嚥性肺炎の関係について興味深い論文が発表されましたので、今回はこの話題を中心に書いていこうと思います。

高齢者が入れ歯を装着して寝るのは、危険!

日本大学歯学部の飯沼利光博士らの研究グループは、平均年齢87.8歳の高齢者524名(内訳:男性228名、女性296名)を無作為に抽出し、口腔の健康状態、入れ歯の装着状態、全身の健康状態、血液検査、肺炎での死亡状況等を3年に渡り追跡調査した結果、入れ歯を使用している人の40.8パーセントが睡眠中も入れ歯を装着しており、睡眠中は入れ歯を外しているという人に比べ、肺炎を発症する確率が2倍以上高いことを明らかにしました。この研究から、入れ歯の夜間装着は避けるべしとの意見が歯科医の間でも大半を占めていると思われますが、特に高齢者の場合は寝る前に外した方が賢明ということです。

成人の口の中には300種類以上の細菌が生息していて、歯に付着した歯垢1mgに1億個以上の細菌がいると言われています。夜間は唾液の分泌が低化し、特に、高齢者で自分で歯を磨けなかったり、入れ歯を清潔に出来ない場合はこれらの細菌が爆発的に増え、誤嚥性肺炎等の生命に関る疾患になる可能性が高まります。

注目される飲んでも安心な歯磨き剤

そうした中で、今、日本で開発された飲んでも安心な歯磨き剤が注目されています。製品名はオーラルピースといい、乳酸菌由来の抗菌物質であるネオナイシンAが主成分で、その他の成分もすべて天然原料であるため、飲み込んでも安心といわれています。日本では、マスコミでも取り上げられ、要介護の高齢者や重度の心身障がい者、闘病中の方、乳幼児をはじめ、誤飲の心配があったり口腔ケアが難しい方に重宝されているようです。北米での購入は、まだ始まっていないようですが、今後、世界中に普及されることが期待される日本発の製品といえるでしょう。

高齢者の口腔ケア

このように口腔ケアは、高齢者、特に要介護者における誤嚥性肺炎の防止に重要です。最近では、清掃を中心としたケアに加え、口腔乾燥の予防や嚥下機能を高める訓練も同時に行われています。専門家のアドバイスを受けながら口腔ケアを実践することが、重要と言えそうです。

高齢者の口腔ケアは、命に関る重要な要因の一つで、専門家のアドバイス、指導の下、口腔清掃や嚥下機能の訓練は、徹底して行うべき。また夜間の義歯装着は、避けるべきということですね。

中出 修
福井県出身。1985 年、北海道医療大学歯学部卒業。1993年、同大で博士号を取得後、講師に就任。 2003年、ロマリンダ大学歯学部卒業。歯科医勤務を経て2005年、タコマ近郊に開業。2006年10月にサウスセンターモール近くに移転。 パンパシフィック歯科医院 Panpacific Dentistry 411 Strander Blvd. Suite 207, Tukwila, WA 98188 ☎ 253-243-7748