健康な歯でスマイルライフ
日本では北海道医療大学歯学部で博士号を取得。米国でもロマリンダ大学歯学部を卒業し、2005年にPAN-PACIFIC DENTISTRY(パンパシフィック歯科医院)を開業した中出修先生に、アメリカで生活する日本人へ向けて歯や口腔について、説明していただきます。
コロナ禍で虫歯が悪化?
コロナ禍も約1年が経過し、社会の激動ぶりには驚くばかりですが、歯科の世界も大きく変化することを迫られているように感じます。まだまだデータが十分ではなく結論付けるのは早過ぎると言わざるを得ないのですが、今回はコロナ禍での歯科の現状について書いていきたいと思います。
コロナ禍における現時点での歯科受診
正確なデータは日米共に出ていないようですが、昨年の春、ロックダウンなどの影響で患者数が激減した歯科医院が多かったのは間違いありません。現在はというと、当院での経験、歯科医の友人の情報およびインターネットからの情報などから総合的に考えても、コロナ前の80〜90%まで戻ってきている歯科医院が多いようです。
歯科医師会等の勧告もあり、以前にも増して歯科医院における感染防御体制が強化されているのは間違いありません。具体的には、以下になります。
(1) 受付・待合室でのパネルや空気清浄機などの設置およびアルコール消毒の徹底。
(2) 患者さん同士が待合室で一緒にならないようにする。
(3) 患者さんおよびスタッフの体温を測定。患者さんの体温が37.5度以上の場合は診療を延期。スタッフに熱がある場合は仕事を休ませ、風邪の症状があればPCR検査を行い、陰性が証明されるまで業務を控えてもらう。
(4) 使い捨てのガウン、キャップ、フェイスガード、マスク、グローブの装備を徹底。
(5)1度使用した診療ルームは、30分程度は患者さんを入れないように心がける。次の患者さんは別の診療ルームで治療を行う。
歯科を受診するリスクと受診しないリスク
前述のような歯科医院側の対応もあって、患者さんが歯科医院で新型コロナウイルスに感染したと思われるケースは、ほとんど見かけません。コロナ禍での歯科診療に対する慎重な意見も、以前ほど聞かなくなっています。また、歯科従事者のワクチン接種もアメリカでは始まっており、歯科医院でコロナに感染するリスクはさらに下がるものと考えられます。
今、多くの歯科医が感じているのは、コロナ禍で歯科の受診を控える人が増えたせいか、虫歯が悪化し、歯が大きく壊れたり、歯肉が腫れたりして緊急で来院する患者さんが目立っているということです。コロナ禍で口腔内の環境が悪くなっているという科学的な根拠はまだ不十分なものの、その可能性は高いと考える歯科医は、筆者も含め少なくないと思われます。
まとめ
コロナ禍では、虫歯など口腔内の環境が悪化している人が多いように感じます。
口腔内の環境の悪化により、新型コロナウイルス感染のリスクが高まる可能性を指摘する研究者もいます。日々の口腔清掃、歯科の定期健診を継続し、口腔および全身の健康の維持につなげることが大切と言えるでしょう。1日も早く、このコロナ禍が収束し、日常生活を取り戻せるようになるといいですね。
参考リンク:https://theharrispoll.com/americans-pandemic-mental-health/