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胸焼けの薬が歯周病の悪化を防ぐ?〜健康な歯でスマイルライフ

健康な歯でスマイルライフ

日本では北海道医療大学歯学部で博士号を取得。米国でもロマリンダ大学歯学部を卒業し、2005年にPAN-PACIFIC DENTISTRY(パンパシフィック歯科医院)を開業した中出修先生に、アメリカで生活する日本人へ向けて歯や口腔について、説明していただきます。

胸焼けの薬が歯周病の悪化を防ぐ?

最近のニューヨーク大学バッファロー校の研究で、胸焼け、胃酸逆流、胃潰瘍の治療や予防で使われる薬に歯周病の悪化を防ぐ作用がある可能性があることが示され、注目を浴びています。今回はこの研究を中心に書いていきたいと思います。

プロトンポンプ阻害薬と歯周病

その薬は、プロトンポンプ阻害薬(PPI:Proton Pump Inhibitors)と呼ばれる種類で、胃壁の胃酸分泌細胞に強く作用して胃酸の分泌を抑制します。今や胃食道逆流症(GERD)や消化性胃潰瘍などの治療になくてはならない存在であり、胃酸を弱めるために世界でも最もよく使われている薬剤のひとつとなっています。

プロトンポンプ阻害薬は骨を吸収する破骨細胞にも作用し、破骨細胞が骨吸収する際に出される酸の分泌も阻害するため、骨吸収を抑制します。しかしながら、これまでプロトンポンプ阻害薬が歯周病に及ぼす影響については、今回の研究が行われるまでほとんどわかっていませんでした。

調査方法と結果

ニューヨーク大学バッファロー校は同校の歯周病専門外来を対象にプロトンポンプ阻害薬が歯周病に及ぼす影響について調べました。

プロトンポンプ阻害薬(Omeprazole、Esomeprazole、Lansoprazole、Rabeprazole、Pantoprazole、Dexlansoprazoleのいずれか)を投与されているグループ(18歳以上、31人、平均年齢61歳)と投与されていないグループ(18歳以上、713人、平均年齢56歳)を、歯周ポケットの深さを指標として比較検討しています。ただし、喫煙者、糖尿病患者は、調査対象から除外されました。結果は以下の通りです。

  歯周ポケット 5ミリ以上の歯(%) 歯周ポケット 6ミリ以上の歯(%)
非投与群 40.5 24.2
プロトンポンプ 阻害薬群 27.8 13.9

 

値が大きいと歯周病がより進行していることになります。つまり、プロトンポンプ阻害薬群では、深い歯周ポケットの歯の比率が少ないことがわかります(統計学的に有意差あり)。プロトンポンプ阻害薬には、歯周病の進行の程度を遅くし、歯周病予防に有用な作用がある可能性があるかもしれません。

まとめ

この研究はまだ始まったばかりで、歯周病においてどのように治療効果を及ぼすかなどの作用機序を知るには、さらなる調査を続ける必要があります。また、プロトンポンプ阻害薬は肺炎、骨折、腸管感染症等の副作用を伴うため、それを考慮すると、歯周病治療への応用にはいくつものハードルがあることは間違いないと言えます。

しかしながら、作用機序を明らかにすることで、将来的には歯周病に効く新薬の開発等、面白い展開が待っているのかもしれません。

中出 修
福井県出身。1985 年、北海道医療大学歯学部卒業。1993年、同大で博士号を取得後、講師に就任。 2003年、ロマリンダ大学歯学部卒業。歯科医勤務を経て2005年、タコマ近郊に開業。2006年10月にサウスセンターモール近くに移転。 パンパシフィック歯科医院 Panpacific Dentistry 411 Strander Blvd. Suite 207, Tukwila, WA 98188 ☎ 253-243-7748