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保護者の喫煙、その子どもの歯にどう影響する? 〜健康な歯でスマイルライフ

健康な歯でスマイルライフ

日本では北海道医療大学歯学部で博士号を取得。米国でもロマリンダ大学歯学部を卒業し、2005年にPAN-PACIFIC DENTISTRY(パンパシフィック歯科医院)を開業した中出修先生に、アメリカで生活する日本人へ向けて歯や口腔について、説明していただきます。

保護者の喫煙、その子どもの歯にどう影響する?

喫煙が、喫煙者本人の歯周病や虫歯に良くないというのは、ご存じの方も多いことでしょう。このコラムでも幾度となく取り上げてきました。さらに最近では、保護者の喫煙がその子どもの歯にまで悪影響を与えるかもしれないとの研究結果もあり、注目されています。今回は、そのアメリカのシンシナティ大学を中心とした研究グループによる発表(JADA153(4):319-329, 2022)を中心に書いていきたいと思います。

研究の背景

アメリカにおいては、38%の子どもが保護者のタバコの煙にさらされている、いわゆるTSE (tobacco smoke exposure)の状況にあります。保護者の喫煙により、その子どもは呼吸器の問題と感染症を引き起こすリスクが高まり、同時に虫歯にもなりやすいという研究報告が出ています。

TSEは、保護者が家の中で喫煙する二次的なものを指すSHS (secondhand smoke exposure)と、保護者が家の中で喫煙しない(家の中では吸わないが外で吸う)三次的なものを指すTHS(thirdhand smoke exposure)に分けられます。たとえTHSであっても、タバコの煙の成分は家の中に入り、空気中や家具の表面などに存在するため、子どもは呼吸や皮膚からの吸収で体内に取り込んでいます。これまでTSEが虫歯と歯科受診に及ぼす影響についての大規模な調査はなく、またTHSのみの場合について、虫歯に及ぼす影響を調べた研究はありませんでした。

研究の方法と結果

研究には、アメリカの2018-2019年における子どもの健康データの国家統計を用いました。子ども(1歳から11歳まで、3万2,214人)のTSEが、歯科的な健康状態と歯科受診の状況に及ぼす影響について、重回帰分析という手法(年齢、性別、人種、未熟児、保護者の学歴レベル、家族構成、貧困度との関連)を取り、調べました。

すると、TSEの子どものグループは、ひとつかそれ以上の歯科的問題を抱えている率、および虫歯の数が、保護者がタバコを吸わない子どものグループに比べ、統計学的に有意に増加していました。また、歯科受診の回数も、保護者がタバコを吸わない子どものグループより統計学的に有意に少なかったのです。ただし、THSのみの子どものグループに限ると、上記の要因に統計学的な有意差は認められませんでした。

まとめ

この研究結果からわかるのは、保護者の喫煙がその子どもの歯の健康にも悪影響を及ぼす可能性があるということです。われわれ歯科治療に従事する立場の人間も、それを踏まえて治療に生かさなくてはいけないと考えています。

中出 修
福井県出身。1985 年、北海道医療大学歯学部卒業。1993年、同大で博士号を取得後、講師に就任。 2003年、ロマリンダ大学歯学部卒業。歯科医勤務を経て2005年、タコマ近郊に開業。2006年10月にサウスセンターモール近くに移転。 パンパシフィック歯科医院 Panpacific Dentistry 411 Strander Blvd. Suite 207, Tukwila, WA 98188 ☎ 253-243-7748