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第107回 歯科治療で麻酔の注射がなくなる?

smilelife20160225-min

歯医者へ来院するに当り、恐怖心を抱く方は必ずしも少なくありません。その原因の大部分を占めると言っても過言でないのが、麻酔の時の注射に対する恐怖心です。皆さんもご経験があると思いますが、われわれ歯科医も歯科麻酔の注射の痛みを少なくしようと神経を使っています。具体的には、注射の前に表面麻酔を塗布する。可能な限り細い注射針を使用する。ゆっくり注射液を入れるなどです。恐がりの人にはとりわけ神経を使うので、歯科医の側のストレスも相当なものです。しかし、それでも完全に注射の痛みをなくすことは容易ではなく、また表面麻酔のみで歯科治療を行うことは、ごくごく簡単な治療に限られます。最近、ブラジルのサンパウロ大学のロペス教授のグループによって、電離療法(Iontophoresis)という方法を用いて歯科の注射の必要性を少なくする可能性のある研究が発表されました。今回は、この研究を中心に書いていきたいと思います。

電離療法(Iontophoresis)とは?

投薬方法の一つ:今から100年以上前から研究および実践されてきたもので、微少電流を流し、薬剤を結びつけたイオンを刺激し、正常な皮膚や粘膜を通してより効果的に吸収させる方法。

今回の研究の概要

使用された薬剤は、2種類の局所麻酔薬(Prilocain およびLidocain)を各々2.5%の濃度の水溶性ジェル状にしたもので、解体業者から得たブタ(死亡してから24時間以内のものに限定)の食道粘膜を使って行われ、微少電流を1時間流して、麻酔薬の組織への浸透性における効果を中心に調べました。その結果、表面麻酔に電離療法を併用すると麻酔薬の浸透性を高め(特にPrilocainで12倍)また組織における麻酔薬の集積を高める(特にLidocain)ことが分かりました。この研究から、表面麻酔に電離療法を併用することによって麻酔効果を高め、表面麻酔のみでもできる歯科治療の範囲が増えることが示唆されました。

歯科での注射はなくせるか?

このような、より効果的な表面麻酔を用いることで、簡単な詰め物の治療や歯石除去などの治療が注射なしでできる可能性がありますが、抜歯やルートキャナルなど、より完璧な麻酔が要求されるような治療では、現時点では無理がありそうです。

日々の口腔清掃および定期的な検診と歯のクリーニングやメインテナンス治療を徹底することにより、麻酔の注射が必要なくなることが、理想的な状態のように思います。

[健康な歯でスマイルライフ]
中出 修
福井県出身。1985 年、北海道医療大学歯学部卒業。1993年、同大で博士号を取得後、講師に就任。 2003年、ロマリンダ大学歯学部卒業。歯科医勤務を経て2005年、タコマ近郊に開業。2006年10月にサウスセンターモール近くに移転。 パンパシフィック歯科医院 Panpacific Dentistry 411 Strander Blvd. Suite 207, Tukwila, WA 98188 ☎ 253-243-7748