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フッ化ジアミン銀 vs シーラント〜健康な歯でスマイルライフ

健康な歯でスマイルライフ

日本では北海道医療大学歯学部で博士号を取得。米国でもロマリンダ大学歯学部を卒業し、2005年にPAN-PACIFIC DENTISTRY(パンパシフィック歯科医院)を開業した中出修先生に、アメリカで生活する日本人へ向けて歯や口腔について、説明していただきます。

フッ化ジアミン銀 vs シーラント

日本の歯科医の間ではサホライドの商品名で知られ、1970年ぐらいから虫歯の進行止めとして使われているフッ化ジアミン銀ですが、虫歯の患部に液体を塗るだけで比較的簡単に虫歯の進行を防ぐというメリットがあります。しかしながら、虫歯の箇所が黒くなるというデメリットのせいか、アメリカでは今まであまり普及していませんでした。ところが最近では、そのメリットに注目する歯科関係者がアメリカでも増えてきており、このフッ化ジアミン銀に関して、非常に興味深い研究がニューヨーク大学歯学部から発表されました(JAMA Pediatrics, 2024)*。歯の溝をラスチック樹脂などで埋めて虫歯予防をするシーラントと比較して検証されています。今回はこの研究を中心にフッ化ジアミン銀について解説します。

研究の目的: フッ化ジアミン銀の虫歯予防効果は、シーラントに匹敵するかどうかを調べる。

研究方法:

期間:2018年2月~2023年6月
対象年齢:5~13歳
対象児童:ニューヨークのマイノリティ人口の比率が高く、虫歯になるリスクが高い学区の児童 7,418人がランダムに選ばれ、そのうち、4,100人のデータが最終的な分析に用いられ、フッ化ジアミン銀とシーラントの虫歯予防効果を比較した。


結果:
研究開始前の全体の虫歯罹患率は27.2%だった。フッ化ジアミン銀を
用いたグループの虫歯罹患率は1,000歯当たり10.2本だった。一方、シーラントを用いたグループの虫歯罹患率は1,000歯当たり9.8本だった。フッ化ジアミン銀とシーラントの間には、統計学的な有意差は見られなかった。

結論:
フッ化ジアミン銀には、シーラントに劣らない虫歯予防効果がある。

補足として、フッ化ジアミン銀の主な作用は、虫歯の進行止めです。フッ化ジアミン銀を虫歯に塗ると、リン酸銀やタンパク銀などの銀化合物とフッ化カルシウムが作られます。これにより、歯の象牙細管が封鎖され、歯質が強化されます。また、細菌の細胞膜や酵素を阻害し、殺菌効果を発揮します。さらに、コラゲナーゼという酵素を阻害して象牙質コラーゲンを保護することで、虫歯予防、初期虫歯の進行抑制、知覚過敏の抑制効果が期待できます。加えて、安価で施術が簡単というメリットもあります。しかしながら、生成された銀化合物が黒くなるため歯が黒く変色し、審美的ではなくなるというデメリットがあります。

まとめ

コストを抑えたい方や見た目を気にしないという方には、良い虫歯予防法の1つと言えるでしょう。


参考文献


中出 修
福井県出身。1985 年、北海道医療大学歯学部卒業。1993年、同大で博士号を取得後、講師に就任。 2003年、ロマリンダ大学歯学部卒業。歯科医勤務を経て2005年、タコマ近郊に開業。2006年10月にサウスセンターモール近くに移転。 パンパシフィック歯科医院 Panpacific Dentistry 411 Strander Blvd. Suite 207, Tukwila, WA 98188 ☎ 253-243-7748