健康な歯でスマイルライフ
日本では北海道医療大学歯学部で博士号を取得。米国でもロマリンダ大学歯学部を卒業し、2005年にPAN-PACIFIC DENTISTRY(パンパシフィック歯科医院)を開業した中出修先生に、アメリカで生活する日本人へ向けて歯や口腔について、説明していただきます。
投薬に関連した顎骨の壊死
骨粗しょう症治療薬による顎骨の壊死については、このコラムでも以前取り上げました。その後も新薬が開発されており、情報をアップデートする必要があると思われます。今回は、合併症として顎骨壊死を引き起こす可能性が指摘されている薬剤を、それぞれ解説していきます。
1.骨吸収抑制薬
骨粗しょう症は、若い人や男性にも見られますが、閉経後の女性に多い疾患です。閉経によるエストロゲン分泌の減少で、骨形成と骨吸収のバランスが崩れて後者が優位になると、骨を壊す破骨細胞が活発化し、骨は徐々にスカスカに。そこで、以下の骨吸収抑制薬を投与して両者のバランスを整えるわけです。
しかし、破骨細胞の働きが鈍ることで、骨の再生がうまくいかず、顎骨の部分的な死(壊死)を招くことがあります。歯が埋まっている顎骨は感染にさらされやすく、ほかの骨より脆くなるため、抜歯やインプラントの手術の際は、より注意を払うべきでしょう。投薬による顎骨壊死のリスクを軽減するには、口腔清掃の徹底、虫歯や歯周病の治療、歯の神経治療、抜歯などで顎骨の感染源を取り除いておくことが重要です。
(1)ビスフォスフォネート(Bisphosphonates)
骨と親和性が高く、骨吸収抑制薬として一般的に広く使われています。長期間、骨に沈着して破骨細胞に作用し続けることが特徴です。
(2)デノスマブ(Denosumab、抗RANKL抗体)
骨芽細胞から産生され、破骨細胞の形成、機能を促進するRANKリガンド(RANKL)に対する抗体。RANKLとくっ付き、その働きを阻害することで破骨細胞の活発化をくい止めます。
(3)ロモソズマブ(Romosozumab、抗スクレロスチン抗体)
最近承認された骨粗しょう症薬。骨細胞から分泌される糖タンパク質、スクレロスチンは、骨芽細胞による骨形成を低下させて破骨細胞による骨吸収を高めますが、そのスクレロスチンと結合することで、骨量増加を阻害する働きをブロックします。
2.血管新生阻害剤
血管形成を防ぎ、がんの増殖を抑えることが期待される血管新生阻害剤には、顎骨壊死を引き起こす合併症のリスクも。毛細血管の新生および破骨細胞の機能をストップさせる働きから、骨の治癒が進まないことが要因と考えられます。
まとめ
このように、骨粗しょう症で使われる薬剤のごく一部ではありますが、顎骨壊死の合併症のリスクが報告されています。合併症を減らすうえでも、日頃の口腔ケアは大切。また、投薬、服用薬の情報を歯科医と共有することも、安全な歯科治療のために欠かせません。