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正しいメンテナンスで補聴器を長持ちさせる

70代のある患者は「今日診てくれないと困る、明日まで待てない」と電話をしてきた。彼は別の場所で購入した補聴器を持っており、それに問題が起きて困っているということだった。補聴器で明日まで待てないというのは、めったにないことだ。受付から話を聞いた印象から強引な方だと思ったが、杖をついて現れた彼は、優しそうなおじいさんだった。

彼は今年になって、夫婦でイリノイ州から孫が住んでいるベルビューに引越してきたばかりだという。補聴器は去年購入した新しいものだ。昨日、補聴器の耳に入る部分を掃除していたところ、右の補聴器の先がとれて、耳の中に入ったままになってしまったのだそうだ。うまく取ることができず、痛みもあるので、早く取り除いて欲しいということだった。早速、耳の中を確認して、ツールで除去完了。プチンと切れた先がそのまま出てきた。切れた部分が耳穴の壁にあたって痛かったようだ。耳穴がすっきりして、しかめっ面をしていた彼の顔が笑顔に変わった。

補聴器の情報は何も持ってきていなかったので、シリアル番号を基に、製造会社に問い合わせて、保証期間などを確認した。すると、補聴器の情報はすぐ分かったが、彼の名前はそのシリアル番号に登録されていなかった。在庫を販売されて、名前の登録などが行われていなかったようだ。今後修理などのサポートを受けられるように、彼の名前を登録するように購入元に連絡をすることを勧めた。購入後、彼は掃除や調整などのために購入元へ行っておらず、独自のやり方で掃除をしていて、今回のようなワイヤー切断という結果になったようだ。通常の掃除では、ワイヤーが切断されるようなことはまずない。

補聴器は眼鏡と異なり、電化製品なので、定期的に掃除やメンテナンスをすることが大切だ。補聴器の寿命は平均で5年~7年だが、メンテナンス次第でそれ以上使っている人もたくさんいる。購入した補聴器は、3カ月か4カ月毎にメンテナンスをしてもらうことを勧める。また、家で行う掃除方法も必ず確認して、パーツを壊さないように注意しないと、それだけでかなりの出費となる場合もある。購入元によっては、メンテナンスする期間は補聴器の保証期間だけ、つまり2年か3年と決めているところもあるので、購入の際に確認しておくことも必要だ。購入金額が安いからと安易に決めてしまうと、後悔することになるかもしれない。

彼は、両方の補聴器を掃除して、新しいパーツを右側の補聴器につけて、昨日までの状況に戻ることができた。その時、奥さんが3歳のお孫さんを連れて入ってきた。
お孫さんは彼に駆け寄り「耳はまだ痛い?」と聞いてきた。彼は「もう大丈夫だよ。ちゃんと聞こえてるよ」と嬉しそうに答えていた。帰り際に、「孫と暮らす生活は幸せで、ベルビューに移ってきて本当に良かった」と私に話してくれた。

[耳にいい話]

真宮 杏奈
ワシントン州と米国認定のオーディオロジスト。ワシントン大学で Speech and Hearing Sciences: Communication Disorders で学士号、Doctor of Audiology プログラムで聴覚博士号を取得。2012年にPAC Audiology クリニック オーディオロジスト(耳の専門医) を開業。 PAC Audiology クリニック オーディオロジスト(耳の専門医) 1605 S. Washington St. Suite 6, Seattle, WA 1370 116th Ave. NE, Suite 201, Bellevue, WA ☎ 425-455-0526