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聴力と耳鳴りの検査と補聴器の件で来院 した49歳の男性の話

聴力と耳鳴りの検査と補聴器の件で来院した49歳の男性の話をしよう。

5年ほど前から、左耳が聞こえづらくなり、最近は耳鳴りがひどく、仕事に差し支えるようになったという。IT企業の社長で、クリニックの選択や予約は秘書が行った。

初日、道を間違ったとか道路が渋滞していたとかでずいぶん遅刻したうえ、 クリニックの場所が分かりづらいと、入ってくるなりたいそう怒っていた。 すごい方が来られたと一瞬思ったが、話してみると非常に頭がきれ、 気遣いもできるおもしろい人だった。 強引さが人より多少目立つが、だからこそ何百人の社員の頂点に立つことができるのだろう。 昔はボディーガードをやっていて顔も含めて体のいたるところを骨折したとか、 ポーカーのプロで試合にもよく出ているなど、興味深い話をしてくれた。

自身の基準で物事の必要性を判断し、仕事に支障を来たす聴力の問題は最重要項目の1つになっていたらしい。検査の結果は、片耳が正常でもう一方は高音難聴があり、難聴側だけ耳鳴りがあった。 耳鳴りの被害度は中度だったが、その結果を知った男性は、自分では重度だと思っていると力説していた。いずれにしても耳鳴りによる影響は十分にあり、毎日30分刻みに会議が入っていて、いろいろな人といろいろな環境で話す必要がある彼にとっては、深刻度は十分だった。

両耳の聴力があまりにも異なる場合は、 CTスキャンやMRIで腫瘍などの確認をすすめるのだが、この男性の場合は数年前にすでに検査済みで、聴力の違いは数度の顔面や頭蓋骨骨折が原因によるものと診断されていた。そこで、 補聴器について説明し、機種を決定した。 通常は購入前に補聴器を貸し出して試してもらうのだが、そんな時間はないということで、即購入・注文となった。支払いの段階で、右耳用にも補聴器を購入したいという。理由を聞くと、ポーカーの最中にヘッドフォンで音楽を聴くのだが、片方を補聴器にするとそれができなくなるからだそうだ。そこで補聴器2つと、補聴器を通して音楽が聴けるようにスマートフォンにつなぐためのリモートコントロールを注文した。

数日後、男性は補聴器の受け取りに再度来院した。うきうきしていて、心待ちにしていたことが伝わってきた。初めての補聴器使用なので、音の設定を目標値よりも少し下げて聞いてもらった。 問題のある左側には耳鳴り軽減治療用の特別な音楽を鳴らすように設定。作動させた瞬間、それまでのせかせかした様子が消え、ゆったりと落ち着き、人が変わったように声も小さくなり、リラックスしている姿が見てとれた。 「すごい。これ良いね。落ち着く!」 という言葉を連発し、静かだが興奮しているのが伝わってきた。リモートコントロールをスマートフォンに繋いで、音楽を流してみた。両耳で音楽を30秒ほど聞いた彼は、「悪くない。ヘッドフォンを使っている時より良い!」と大変喜んでくれた。

どうなるかと少し心配だったが、今では人の話が聞きやすく、耳鳴り用の音楽のおかげでイライラ感も減少し、仕事に集中できるそうだ。次回の来院でどのようなことを言ってくれるのか、今から楽しみにしている。

[耳にいい話]