今回はアイソトニック(Isotonic)運動についてお話ししたいと思います。以前のコラムでアイソメトリック(Isometric)運動を紹介したのですが、簡単に説明しますと、アイソメトリック運動は、けがをしている時に、患部を動かすと痛みが出るものの筋肉自体に損傷がない場合に有効な運動法です。動かない物に対して、身体を固定した状態で力を使うので、筋肉の長さに変化がありません。ですが、力を込めているので筋肉の運動になる、という特殊な運動法です。
アイソメトリックが「同じ長さ」という意味なら、アイソトニックは「同じトーン」という意味があります。アイソトニック運動は、アイソメトリック運動後にする場合が多く、筋肉の緊張度(トーン)は同じだけれど、長さが違う運動法です。ダンベルなどを上下に動かす運動で、ダンベルの重さが一定しているため、持ち上げる時も下げる時も筋肉のトーンは同じになります。
持ち上げる時のほうがしんどいイメージがありますが、ゆっくりと下ろすのも簡単ではなく、上腕二頭筋(Biceps)はダンベルを持ち上げると筋肉が縮み(Concentric)、下げると筋肉が伸びます(Eccentric)。筋肉の長さによって消費するエネルギーは変わります。詳しく説明をしていくと、逆にわかりにくいかもしれませんね。ですが、1度理解をしておくと、けがをした時にどのような運動法が良いのか、判断ができるようになります。
つい最近まで、けがをして病院やクリニックに行くと、痛み止めを飲んだら活動をしないようにと当たり前のように言われていました。「2週間は安静に」というものです。ですが、ここ十数年の間で、この処方箋は大きく見直されています。逆に、2週間の無活動、無運動が関節や筋肉の回復を遅らせる要因となるという見方が出てきました。五十肩(Frozen Shoulder)や関節の変質(Joint Degeneration)などにつながることもあるので、最近では、可能な範囲でのストレッチや軽い運動を治療法に取り組むのが主流となっています。ですが、無理な運動がけがを大きくすることもあるので、必ず医師に相談してからにしましょう。