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難聴の自覚症状

50 代の夫婦の話をしよう。ふたりとも明るく、さばさばした性格のようで、奥様がご主人を強引に連れ出して来院した。ご主人の声は普通の大きさだが奥様の声量は非常に大きい。ご主人の耳が聞こえにくくなってからは、低い声で、できる限り張り上げて話すようになったらしい。ここ 5 年ばかり、ご主人が聞き間違いをしたりテレビの音量が大きかったり、彼女を無視したりすることが増えて、夫婦間で言い争いが絶えないそうだ。ご主人は「僕の耳はちゃんと聞こえている、彼女や周りの人間がはっきり話さないだけだ」と言う。聴力検査を行うと、結果はかなりの難聴。高音だけでなく低音もかなり下がっている。本人に自覚がないのは、奥様が大きな声で話しかけていたからだろう。検査結果を説明する前に補聴器を調整し、装着してもらった。私が通常の声の大きさで結果を説明しようとした矢先、奥様がいつもの声量で「聞こえる?」と尋ねた。そのとたん、彼は「痛い、うるさい」と言って、彼女を睨んだ。奥様は、「よく聞こえているようね、へへへ」とささやくように私に言った。それから数年、夫婦ゲンカは減ったようだが、「悪口が言えない」と奥様からの苦情があった。

[耳にいい話]