Aさんの会社はここ数年で急成長しているそうです。そんな中、Aさんはマネージャーになりました。仕事量が増えたため、新しい部署を新設したのでその管理を任されたそうです。そのため仕事の内容はほとんど変わらず、報告も今までと同じ上司にするのですが、Aさんは仕事がしにくいと感じていました。というのも、Aさんの部署の決定権はAさんにあると言われているにも関わらず、上司のBさんに過干渉な面があるというのです。実際に口出しをするのではなく、Bさんの「It’s your call.」「 It depends on you.」「It’s up to you.」などのフレーズが気になり、それを聞くたびに「わかってます、言われなくったって自分で判断します!」と言い返したくなるといいます。
Aさん自身はこれらを脳内で「君次第だよ」と訳しているそうですが、英語でのニュアンスは相手をイラつかせるような意味があるのでしょうか? Aさんがアメリカ人の友人に確認してみた所、「特に見下したような意味があるとは言えない。決定権はAさんにあると言っているにすぎないのでは?」との返事でした。
スムーズなコミュニケーションを行うにはなるべくYouを使わないように、といわれます。特に主語でYouを使うと、言われた側は「命令された、決め付けられた」という印象を持つことが多い、そこで、主語に一人称を使って文章を組み立て直して話をすると聞き手は受け入れやすい、というものです。Aさんの場合も「you」「your」が強調されて聞こえてしまったため、「君に判断させてあげよう」といった、上から目線での言葉に感じられた可能性が考えられます。
しかし話を伺っていくうちに、他の理由も見えてきました。Bさんはマイクロマネージメントをする傾向がある様です。Aさんの仕事も昔はBさんが担当していて、知識も経験も豊富だそうです。Aさんが仕事を始めた頃は、Bさんは面倒見のよい上司という印象だったそうですが、Aさんが仕事に慣れてからはBさんをわずらわしく感じるようになったとの事。この様な背景が2人のコミュニケーションにおいても影響していたようです。面倒見のよい上司としてのBさんは 「君はもうマネージャーだから僕は口出しはしません。君がマネージャーとして決断するべきだから」という、部下としてのAさんに対するマネージャーの心得的なアドバイスのつもりで、「It’s your call」と言うのかもしれません。それが、マネージャーとして自分が何をすべきかを解っているAさんにとっては、「大きなお世話。そんなことまで指示してくれなくても結構です」と、反感を抱いた原因でもあるようでした。
言葉はコミュニケーションを行う際の人間関係、感情や状況によって意味合いが変わっていきます。Aさんとしては、Bさんの言葉に振り回されない事。つまり、言われた事に感情的にならないようにするのが、ストレスマネージメントのスキルの一つといえます。