今や誰もが知る「SDGs(持続可能な開発目標)」。この目標の達成を目指して経営する企業が、世界にはたくさんあります。もしかしたら、あなたが実践者になる日が来るかも? 意外と知られていない、身近にあるSDGs経営を紹介します。
日本発!
シアトルで見る世界の衛生改革:SATOトイレ
簡易式トイレシステム「SATO(Safe Toilet)」って?
「SATO」は、SDGs 17個の目標のうち、目標6「安全な水とトイレを世界中に」の達成に貢献すべく、日本の大手建材・住宅設備メーカーLIXILが2012年に開発した革新的なトイレシステムです。世界では約20億人が衛生的なトイレにアクセスできず、感染症の蔓延によって毎年数百万人が命を落としています。この深刻な問題に対処するためにSATOトイレは生まれました。
特筆すべきは、そのシンプルで効果的なデザインです。排泄物が落下するとフラップ(中蓋)が自動的に閉じ、臭気や害虫の侵入を防ぎます。また、わずか200ミリリットルの水で作動するため、水資源が限られた地域でも使用可能です。設置も簡単で、特別な工具や専門知識がなくても、トイレ用に穴を掘った場所に取り付けることができます。排泄物の適切な処理により、水質や土壌の汚染を防ぎ、環境保護に貢献するだけでなく、疾病が減少することで、医療費の削減や労働生産性の向上が期待でき、経済的な効果も生まれます。さらに、安全でプライバシーが守られたトイレが学校や職場に提供されることは、少女の教育機会と女性の社会参加を支援し、ジェンダー平等にもつながってゆくのです。
実物のSATOトイレ。和式トイレのような形をしており、簡単に取り付けられる。
シアトルとのつながり
シアトルに本部を置くビル&メリンダ・ゲイツ財団(BMGF)は、マイクロソフトの元会長ビル・ゲイツ氏と元妻メリンダ氏によって2000年に創設された世界最大の慈善基金団体で、現在は「ゲイツ財団」として活動しています。同財団は、世界の衛生問題解決に向けて大規模な資金と資源を投入し、先進的なトイレ技術の研究開発や衛生インフラ改善プロジェクトを支援しています。LIXILも共同プロジェクトとして新しいトイレ技術の開発や普及活動も行っています。
シアトル・センターの向かいに位置するビル&メリンダ・ゲイツ財団ディスカバリー・センターでは、SATOトイレのモデルが展示されており、無料のワークショップを通じて、その重要性を学ぶことができます。「What to do with all the poo?」というワークショップでは、新しいトイレを考案したり、国際的な衛生問題についてディスカッションを行うコーナーが設置されており、毎年11月には「世界トイレの日」に合わせて水の味見、臭い体験といったワークショップも開催されています。2024年は11月16日(土)に予定されています。詳しくはこちら(www.discovergates.org)。
また、LIXILはシアトルの大学や研究機関とも連携し、技術開発や効果測定に関する共同研究を実施。シアトルで開催される国際会議やイベントにも積極的に参加し、情報共有やネットワーキングを行い、より多くの人が衛生問題の改善に興味を持つよう働きかけています。
©A Better Way to Go: Toilets and the Future of Sanitation/Gates Foundation Discovery Center
社会を一歩前進させるのは、SDGs経営に取り組む企業のちょっとした工夫を知った、あなたの一歩です。