シアトル駐在日誌
アメリカでの仕事や生活には、日本と違った苦労や喜び、発見が多いもの。日本からシアトルに駐在して働く人たちに、そんな日常や裏話をつづってもらうリレー連載。
取材・文:磯野愛
#19 大澤正太郎 インテラUSA
◼️千葉県出身。アメリカ生活をきっかけに料理に目覚める。友人とのバーベキューではもっぱら焼き方担当で、肉の焼き加減ならレアからウェルダンまでお任せあれ! 家庭用のミートスライサーが欲しくて、妻の芽衣さんに稟議申請中。
インテラUSAはJKホールディングスを母体とする建材の販売会社です。私は2009年にJKホールディングスに採用となり、ジャパン建材株式会社に入社。丸10年、営業ひと筋です。
最初は新木場営業所に配属となり、すでにお付き合いのあった取り引き先や新規の営業先を回る毎日でした。担当したのは墨田区・荒川区・江東区といった下町エリアで、材木屋や水道屋など地域密着型の老舗ばかり。車1台がやっと通れるくらいの狭い道を毎日運転しながら、営業のいろはを学びました。時には電話越しで思いっきり怒鳴られることも……。都内はライバル会社も多く、ただ通っていれば仕事を取れるというわけではありません。商品を卸している顧客のその先で、工務店が着工する実際の建築現場にも足を運んで現場の状況を把握し、自ら採寸をして商品を提案するなど、自分らしい工夫も重ねながら仕事に邁進してきました。
そんな生活を4年ほど送った頃、会社の海外語学研修制度で参加者の募集がありました。新しい環境に身を置きたかったのと、実は、成田空港で勤務する妻が英語で外国人と話す姿を見て、ひそかに憧れを抱いていたこともあって、強く興味を持ちました。ただ、単身で行くことが条件。長女が生まれたばかりだったので、妻には絶対賛成してもらえないと思っていたところ、まさかの快諾。力強く、背中を押してもらいました。英語漬けの毎日をと会社が準備してくれたのはスポケーンの語学学校と1年間のホームステイ。ハウスメイトに恵まれ、エチオピア人の彼に学校への通い方からバスの乗り方、洗濯機の使い方まで、生活全般を教わりました。毎晩、夕食時には英語の練習を兼ねて、その日の出来事をホストファミリーにプレゼンテーション。まるで上司に営業報告をしているかのようでした(笑)。
プログラム終了後は本社の海外事業室で2年間、輸出入業務の基本を学び、2016年8月よりレントンにオフィスを構えるインテラUSAに駐在。営業の最前線は現地のスタッフに任せ、私は受発注、輸出入の書類作成、コストやスケジュールの管理などを行っています。そのほかには月1回程度、全米各地で開かれる建材の展示会の手配もしています。駐在員はよく「何でも屋」と言われますが、まさにその通りで、日本にいた頃よりも仕事の幅は格段に広くなりました。現地のスタッフには、日本的な「2、3言ったら10わかるだろう」という考え方は全く通用しません。細かく指示を出し、納得してもらうことが必要。商慣習の違いもあります。たとえば請求上のミスなどがあれば、日本ではとんだ失礼に当たり大騒ぎになりますが、こちらでは単純にミスを指摘されて請求書を再発行し、それでおしまい。その辺の大らかさというかフェア精神には、とても助けられていますし、見習いたいですね。
日本では仕事ばかりの毎日で、子どもが起きる前に家を出て、寝たあとに帰宅するような生活を送っていました。こちらでは家族と持てる時間が増え、やっと家族の一員になれたような気がしています。長年、妻に任せきりだった家事や子育ても修行中。いろいろチャレンジしてみましたが、自分が楽しめて、妻に迷惑もかけないのは料理だと判明し、土日の食事は私が担当するようになりました。英語力の確かな裏付けとなるTOEICの受験もまだまだ頑張りたいです。
幸い、社の営業成績も大幅に伸びています。現場に合った新しいシステムやツールの導入など、社内外の変化に対応できる環境をこれからも牽引していきたいと思っています。