バイリンガルの育て方
言語は文化や環境の中で自然と学ぶもの
1月14日、遊学舎で「バイリンガルの育て方」をテーマにしたセミナーを開催。中島晴世校長が家庭での日本語学習の取り組み方についてレクチャーしました。夏休みに入り、9月からの新学期を控え、子どもの進路を考える家庭も多いはず。その内容の一部を改めてお届けします。
取材・文:小林真以子
バイリンガルの基礎は7歳までに
バイリンガルには、聞くことのみできる聴解型、会話はできるが読み書きできない会話型、会話と読み書きができる読み書き型の3タイプがある。各家庭での日本語に取り組む姿勢や、日本語を始める年齢によって、バイリンガルの能力に違いが出てくる。そのため、子どもにどのタイプのバイリンガルになって欲しいかを明確にすることが大切になる。
英語と日本語では、右脳と左脳の使い方が異なるとの研究結果も出ている。左脳は言語脳と言われているが、日本人は、アメリカ人が雑音として右脳で処理する虫の声なども、左脳で処理しているという。この右脳と左脳の機能が分化するのが7歳頃の「臨界期」だ。この臨界期までに言語を学ぶことで、受け取った情報を自然に吸収でき、より全体的に言語を獲得できると言われている。幼児期にどれだけ日本語教育に取り組んでいるかが、バイリンガル児を育てるひとつのポイントになる。
言語は、文化という大きな氷山の一角。特に実体験は記憶に残るため、親子で一緒に何かをする習慣を持つことは効果的だ。たとえば、日本食を楽しむ、日本の伝統文化を実践するなど。アメリカで生活していると、子どもは成長段階で英語が勝ってくるもの。まだ文字もわからない年齢から漢字を絵として紹介するなど、幼少期にどれだけ多く日本語を目にし、音として耳から聞き、生活の中で感じているかで、後の日本語学習効率も違ってくる。
9歳の壁
日本語教育は子どもがお母さんのお腹の中にいる時から始まっている。ある研究では、耳から聞く90%が母語になると言われる。妊娠中でも、生後間もない時期でも、言葉が出ないうちから日本語で語りかけることが大切。絵本の読み聞かせは、とても効果がある。また、国際結婚をした夫婦など、両親の一方のみが日本語を話す家族がいる。この場合、日本語を話す親は英語と日本語を混ぜて会話をしてしまうが、「家では1人1言語」を基本に。学校で出た宿題は、子どもだけでやらせず、親子で一緒に取り組むのがおすすめだ。宿題は親子ワーク。一緒に何かをやるという経験が、将来の親子関係にも良い影響を与える。
日本語学校に通う子どもたちが必ずぶつかるという、9歳の壁がある。小学3・4年生レベルの国語は、習う漢字も多く、語彙も難しくなるため、子どもたちの学習モチベーションが下がるのだ。子どもの日本語の伸びには個人差があり、どこまで日本語を学んで欲しいかは家庭によっても違う。親の焦る気持ちを押し付けて、子どもの日本語学習を空回りさせないこと。子どもの将来を長い目で見て、現地校や習い事との兼ね合いを考え、頑張って乗り越えるのか、ペースダウンをするのかなどを見極めるのが肝要だ。両立に悩んだ時は、日本語学校の先生やカウンセラーなどに相談しよう。
バイリンガル子育ては、親と子の「土俵際の争い」。性格的にバイリンガルになることが難しい子どももいるが、親の細く、長く、あきらめない取り組みで、聴解型バイリンガルとなった例も実際にある。バイリンガルであることは、より広い視野を持ち、コミュニケーションの柔軟性や思考力の創造性の高さにつながる。将来、AI(人工知能)に仕事を奪われると言われているが、AIは人間力を持たない。コンピューターにできない、人間としての生きる力を伸ばすためにも、家族みんなでバイリンガル子育てに取り組んでいこう。
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