1941年12月7日の日本軍による真珠湾攻撃で、アメリカ西海岸で暮らす12万もの日本人、日系人たちの生活は一変しました。翌年には強制収容となり、全米10カ所での収容所暮らしが始まったのです。現在、アメリカに住む私たちにも関わる歴史を紐解いてみませんか。
シアトル日本町で歴史に触れる
西北日系博物館
皆さんが「こどもの日」や「文化の日」などのイベントで訪れたことがあるかもしれない、ワシントン州日本文化会館(JCCCW)。1階の西北日系博物館では、展示を通してシアトルの日本人、日系人の歴史を紹介している。常設展示に、戦前、戦中、戦後の日系コミュニティーの歴史を伝える「ハントホテル展」、「一世の先駆者・三原源治展」があり、入場は無料だ。日英両語によるバーチャル・ツアー(www.jcccw.org/virtual-tour)も見応え十分。
オンラインで日系史を学ぶ「スピーカー・シリーズ」の取り組みも興味深い。開催15回目となった5月20日には、ミニドカ強制収容所での生活を体験した日系2世の時田章吉氏を招いた。そのほか、多彩なプログラムやイベントが行われており、詳細はウェブサイトにて確認できる。
建物は、1913年から1929年にかけて建てられた旧国語学校の校舎。100年以上の歴史を持つ米国本土最古の日本語学校は、今もシアトル日本語学校として運営されている。館内には日本語図書館、日本物品再販店があり、伊藤博文初代内閣総理大臣の書も展示されるなど、博物館以外にも見どころは多い。
●ハントホテル展
1945年の終戦でミニドカ強制収容所からシアトルに帰還した日系人たちは、住む場所すらなかった。現在JCCCWが入る建物は仮住まいの場となり、日系人30家族以上が共同生活を余儀なくさせられた。ミニドカ強制収容所がアイダホ州ハント近くにあったため、「ハントホテル」と呼ばれた。
●一世の先駆者・三原源治展
戦前、パイオニアスクエアでレストランを経営し、シアトル日本人会会長も務めていた三原源治氏(1890-1982)。真珠湾攻撃後、スパイの疑いをかけられFBIに連行された多くの日系1世のうちのひとりだ。
開館時間:10am~5pm
定休:土日 料金:無料
問い合わせ:☎️206-568-7114、admin@jcccw.org
詳細:www.jcccw.org/museum
ウィング・ルーク博物館
インターナショナル・ディスリクトに位置するウィング・ルーク博物館をご存じだろうか。40歳という若さでこの世を去ったアジア系初の市議会議員、ウィング・ルーク氏の遺志を継ぐ形で1967年に設立された。日本を含むアジアからの移民の歴史・文化を、当時の写真や遺物などの展示を通して紹介している。
ここを訪れるなら、第二次世界大戦中にシアトル近郊の日本人、日系人が多く送られたミニドカ強制収容所での出来事を語る動画をぜひ観てみよう。収容所で実際に使われていた家具や当時の写真も展示されている。また、筆者が訪れた4月中旬は日系アメリカ人彫刻家のジェラルド・ツタカワ氏の作品を集めた特別展が開催されていた。10月14日からは、「日系アメリカ人の抵抗+第ニ次世界大戦中のレジリエンス」展を予定しているので、こちらも注目したい。
2008年から博物館が入るイースト・コング・イック・ビルは、中国人開拓者たちが資金を出し合い1910年に建設した歴史的建造物。アジア系移民のためのホテルやアパート、小売店で親しまれた当時の様子が、館内バーチャル・ツアーを通して垣間見られる。地域に根差した博物館として、日本町を含むインターナショナル・ディストリクト周辺のガイド付きツアーにも力を入れる。現在、ツアー内容は月替わりで事前予約制となっている。スケジュールはウェブサイトで確認を。
開館時間:10am〜5pm
定休:月火 料金:一般$17、62歳以上$15、13〜18歳$12.50、 5〜12歳$10、4歳以下無料
問い合わせ:☎️206-623-5124、visit@wingluke.org
詳細:www.wingluke.org
シアトル日本町の歴史をたどる『日系アメリカ人ゆかりの地ガイド』
戦前の最盛期には8,500人規模の日系コミュニティーが形成され、ロサンゼルスに次ぐ大きさを誇っていたシアトル日本町。ウィング・ルーク博物館、JCCCW、クロンダイク・ゴールドラッシュ国立歴史公園のプロジェクト・チーム作成のガイドマップは日本語版もあり、歴史散策にうってつけ。各館で配布中だ。