Home シアトル情報 シアトルブログ フードバンクでボランティア...

フードバンクでボランティア体験!

コロナ禍で食糧事情ががらりと様変わりしたアメリカ。以前から貧富の格差が大きな社会問題となっていましたが、あらゆるビジネスの突然の休業や廃業で仕事がなくなり、日々の食べ物も足りていない生活困窮者が続出しています。そんな中、注目されているのがフードバンクの存在。シアトル留学中のインターン生が、実際にボランティアを行いながら、現状を探ってきました。

取材・文・写真:中山 栞

そもそもフードバンクとは?

経済的に困っている低所得者向けに無料で食べ物を提供・配布する非営利団体、フードバンク。企業や農家などから、売れ残った食べ物を大量廃棄する代わりに寄付してもらうことで、食糧危機を救うだけでなく、環境問題への取り組みにもつながる画期的なシステムだ。近年は、スターバックスが米国内の直営店7,600店で売れ残った商品を全てフードバンクに提供するなど、さらに話題を集めている。食べ物を受け取るための条件は特になく、低所得者に限らず誰でも申請可能。コロナ禍において庶民の強い味方となっている。

フードバンク利用者は昨年の2倍に増え、ワシントン州では4月時点で160万人以上となっている。また、コロナ禍により食事がままならない生活困窮者は220万人にも上り、飢餓率は4%から13%に上昇。失業者や減収世帯の増加の影響が出ていると見られる。

アジア系コミュニティーをサポートするフードバンク

シアトルではアジア系コミュニティー向けのフードバンクも存在する。非営利団体のアジアン・カウンセリング・アンド・リファーラル・サービス(ACRS)では、アジア系食材を取り扱うフードバンクをワシントン州で唯一定期開催し、毎週水曜日から金曜日までオープン。
日本人にはうれしい豆腐や米なども提供している。現場で働くボランティアも、アジア人が多いのが特徴だ。サポートを受ける側も、文化や言語の背景をわかってくれているという安心感がある。ACRSはフードバンク以外にも、教育、家庭内暴力(DV)、メンタルヘルスなどの諸問題の解決に向けてさまざまな取り組みやサービスを実施しており、シアトルのアジア系住民の生活を支えている。

ボランティアで体験したフードバンクでの作業

フードバンクでは、ボランティアとひと口に言っても、多くの種類がある。私は新型コロナの影響で必要になった新たなボランティアとして参加した。コロナ前は、インターナショナル・ディストリクトにあるACRS事務所で、人々が列を作り、食べ物を受け取っていた。しかし、このコロナ渦では、人との接触、混雑を避ける必要がある。そのため、希望者のひとりひとりに配達する形式に変更された。そこで新たに募集されたのが、配達に携わるボランティアだ。

食べ物は紙袋に詰めた状態で配達される。

すぐに食べられる総菜ではなく、自炊向けの野菜や米などが中心

まず、ACRSの事務所に大量に届いた段ボール箱、紙袋の中身を確認する。個数は日によって異なるため、正確に数えて本部に伝えなければならない。数えているうちに、事務所の前にバスが並び出す。数え終わったら、待機中のバスの運転手とリストを見ながら、届ける世帯数と食べ物の照らし合わせを行う。ここで数の不一致があると、配達時に運転手の困惑を招くため、正確性を要する。英語を話さない運転手も多いので、お互いに配慮しながら確認作業を進めていく。

次に、確認した個数分を倉庫からバスへ積み込む。倉庫に台車はあるものの、台車からバスに載せるのは手作業だ。食べ物がぎっしり入った袋はせいぜい2、3キロの重さではあるが、全体で600個ほどになり、往復で次々やって来るバスに詰め込む作業はかなりの重労働。最後に、個数の最終確認を慎重に行い、午前中のボランティアは終了となる。

配達するバス運転手や事務所スタッフの声

あるバスの運転手は「いつも水曜日は40、50世帯をバスで回って配達しているよ。週によってバスの台数は違い、全部で12台くらい。バスの運転手は、それぞれ配達先のリストを持っていて、事務所の前に並んで、食べ物を受け取るんだ」と話してくれた。

事務所の前に次々と並ぶバスコロナ禍の今は食べ物が家に直接届けられる

また、ここで働いて1年半になる事務所スタッフにも話を聞いた。新型コロナの影響について尋ねると、「コロナ禍で急にシステムが変わり、最初は困惑したよ。運転手も全員が英語を話せるわけではないからね。事前に配達先と個数が記載されたリストで確認していても、配達時に数が合わないことはよくあるんだ。コロナ前は事務所に直接来てもらって配布していて、足りなくてもすぐに倉庫から補充できたから、そこまで数の正確性を考えなくて済んだのに」と、戸惑いを隠せない様子だ。

ボランティア体験は今ならリモートでも可能

非営利団体であるACRSは、ボランティアの力を常に必要としている。ホームページを通して、誰でもボランティア登録ができるようになっている。コロナ禍で人との接触を避けたい人向けに、リモートで作業できるボランティアもある。

現場では、学生ボランティアの姿も多く見られた。ACRSでのボランティアは、アジア系コミュニティーの人たちと交流を図るのに良い機会となる。困難な時期にこそ、コミュニティーの力を合わせることは大切。困っている人の支援になるだけでなく、自身のコミュニティーを広げることにもつながる。今だからこそできる社会貢献のひとつとして、考えてみてはいかがだろう。

Asian Counseling and Referral Service
3639 Martin Luther King Jr. Way S., Seattle, WA 98144
☎206-695-7600、info@acrs.org
https://acrs.org

その他のシアトル近郊にあるフードバンク

 

ユニバーシティー・ディストリクト・フードバンク
週4日、ウォークインによるフードバンク利用が可能。シアトル北東部の郵便番号、98102、98103、98105、98112、98115、98125地域の居住者が対象。食品だけでなく、粉ミルク、おむつ、ペットフードなども提供。宅配サービスの申請も受け付ける。

University District Food Bank
場所:5017 Roosevelt Way NE., Seattle, WA 98105
営業時間:月9am〜3pm、火11am〜8pm、木11am〜8pm、金11am〜4pm、土9am〜12pm
問い合わせ:☎206-523-7060
詳細: www.udistrictfoodbank.org

ウエスト・シアトル・フードバンク
食品、ペットフードその他を、ウエスト・シアトルの郵便番号、98106、98116、98126、98136地域の居住家族に配布。1世帯当たり週1回の利用が可能。約70〜100世帯への宅配サービスもボランティアにより提供されている。

West Seattle Food Bank
場所:3419 SW. Morgan St., Seattle, WA 98126
営業時間:水10am〜3pm、木9am〜2pm、金10am〜2pm ※55歳以上のシニアのみ火9pm〜1pm
問い合わせ:☎206-932-9023
詳細:https://westseattlefoodbank.org

パイク・マーケット・フードバンク
郵便番号が98101、98104、98121地域のダウンタウン居住者対象。また、同エリア内のホームレスの人々にも食品を提供している。営業時間中に週1回、食品を受け取り可能。

Pike Market Food Bank
場所:1531 Western Ave., Seattle, WA 98101
営業時間:火9:30am〜3pm、水3pm〜7pm、木9:30am〜3pm
問い合わせ:☎ 206-626-6462
詳細:www.pmfb.org

ホープリンク
ベルビューの中でも知名度の高いフードバンク。事前に登録をすると月に2回、食品を受け取ることができる。配達を行うボランティアもいる。郵便番号が98004、98005、98006、98007、98008、98009、98015、98039、98040地域の住民が対象。

Hopelink
場所:14812 Main St., Bellevue, WA 98007
営業時間:火12pm〜4pm、水3pm〜7pm、木10am〜2pm
問い合わせ:☎ 425-943-7555
詳細:www.hopelink.org/location/bellevue-food-bank-and-emergency-services

リニューアル・フードバンク
新型コロナ感染拡大防止のため、食品は屋外での引き渡しとなっている。新鮮な果物や野菜はあらかじめ袋詰めされており、外で待機する利用者が希望する食品を伝えると、ボランティアのスタッフが持って来てくれる。

Renewal Food Bank
場所:Highland Covenant Church
15022 Bel-Red Rd., Bellevue, WA 98007
営業時間:月10am〜1pm、火4pm〜6:30 pm、水10am〜1pm
問い合わせ:☎ 425-736-8132
詳細:http://renewalfoodbank.com