┃環境保護の動きは今、どうなっているか
『EVと自動運転/クルマをどう変えるか』(鶴原吉郎著、岩波新書)は、今「100年に一度」の大きな転換期を迎えつつある、自動車産業の最前線を紹介する。著者は、この大きな変化のキーワードに、「電動化」「自動化」「コネクテッド化」を挙げている。「電動化」とは、EV(電気自動車)に代表されるように、これまでのエンジンからバッテリーで動くモーターへと置き換わっていく動き。「自動化」とは、センサーや人工知能を
搭載して、人間のドライバーを必要としない自動運転車への進化の動き。さらに、「コネクテッド化」とは、クルマをインターネットに常時接続させることによって、これまでなかったような機能やサービスを利用できる
ようにする動き、だという。クルマの技術革新は、安全性能や環境性能の進化をもたらすだけにとどまらず、人々とクルマの関係を変えていくかもしれない。その変化の最先端を見ている世界の巨大企業(自動車メーカーだけにとどまらない)は何を狙っているのか。自動車産業の現在と未来を読み解く。ペットボトルや古紙、そして金属類から古着まで、各種リサイクルは、「環境にやさしい」取り組みだとされ、日本では資源品の分別収集が積極的に行われている。国内で回収された資源品のうち、国内で再使用・再生利用されているのはごく一部で、その多くは海外に輸出されている。古紙や廃プラスチック、鉄スクラップなどの再生資源は、今や輸出の主力品のひとつとして考えられているほどだという。
『リサイクルと世界経済/貿易と環境保護は両立できるか』(小島道一著、中公新書)は、現状の「リサイクル」は、「環境にやさしい」どころか、輸出先で環境汚染を生むこともあるという現実を突き付けている。海を越えて遠く運ばれている再生資源や中古品(国際リサイクル)は、リサイクルの過程で環境汚染を生じさせたり、中古品の品質が悪く廃棄せざるを得なかったりと、問題が発生していることもあるという。こうしたことで、中古品や有害廃棄物の国際移動には、国際的なルールや規範が作られ
るようになってきた。これまで世界中から廃プラスチックを輸入してきた中国が、2017年に公害対策のため輸入規制に踏み切ったことの影響も、これから出てくるだろう。本書では、長く「国際リサイクル」研究に携わり、アジアを中心に現地調査も重ねてきた著者が、国際リサイクルの現状と課題について解説する。環境汚染などの問題を起こさずに、国際リサイクルを進め、資源の再生利用を持続させるために必要なことは何か解説する。
┃世界経済と日本の立ち位置
かつて「貿易立国」モデルで成功した日本が、「復活する」ために必要なことは何か。『新貿易立国論』(大泉啓一郎著、文春新書)は、中国やASEAN諸国といった、新興国・途上国に追い上げられている、今の日本の立ち位置を正しく理解するために必要な実情について解説する。21世紀に入り、新興国・途上国の大都市は新たな成長段階に突入している。しか
し、成長の牽引役、つまりビジネスの主戦場は「新興国・途上国」そのものではなく、「新興国・途上国」の大都市であることに注意が必要だ、と著者は指摘している。たとえば、インドの経済躍進を牽引するほど急成長しているバンガロールという都市が、「インドのシリコンバレー」と呼ばれるようになった戦略とは何か。国別の統計数字だけでは読み切れない、都市や地域ごとの成長戦略を学び、これからの日本が取るべき新しい貿易戦略について考察する。『ヨーロッパで勝つ! ビジネス成功術/日本人の知らない新常識』(塚谷泰生著、ちくま新書)の著者は、商社マンとして長くヨーロッパでの取り引きに携わった後に現地で起業している。これまで、日本企業は「日本の製品は良い。良いものは売れるはず」と頭から思い込んで来たが、その精神では今後世界市場では勝負できない、と指摘する。今、ヨーロッパ市場では中国やアジア諸国の台頭が著しい反面、日本の存在感が「本当に薄くなってきている」。その危機感が、現地で暮らす人々に共通してあるという。今後、ヨーロッパ市場でのビジネスを攻略するためには、日本の常識を押し通し、「日本ブランド」に固執するのではなく、現地のニーズを知り、現地の契約条件に柔軟に合わせることが必要だ、と訴える。
※2018年5月刊行から(次号につづく)