┃中露に挟まれた日本の立場
『ロシアと中国 反米の戦略』(廣瀬陽子著、ちくま新書)は、米国一極支配に対抗する、という共通目標を持っている中国とロシア、2つの大国の思惑と熾烈な駆け引きについて解説する。
今、リアルタイムで動いているのが、中国の「一帯一路」「新シルクロード構想」、ロシアの「ユーラシア連合構想」であり、中露の思惑が交錯し、著者によれば「微妙に対立しながら協力を続けている」状態だという。両大国に挟まれた日本はどうしていくべきか。中露関係については「蜜月は偽装されたものであり、その賞味期限はいつまでか」ということを常に考える必要がある、と指摘する。
『自動運転「戦場」ルポ/ウーバー、グーグル、日本勢─クルマの近未来』(冷泉彰彦著、朝日新書)では、2018年現在における、「自動運転車」にまつわるさまざまな現場を、在米ジャーナリストが取材、レポートしている。
完全な自動運転を目指し、バラ色の未来を夢想するシリコンバレー(IT巨大企業)と、クルマ社会の維持を求めるデトロイト(自動車製造業界)の間には、今はまだ大きな落差がある。大きな可能性と同時に、さまざまな困難を抱えている自動運転の実用化は、どこまで進み、人々はどこまで自動運転を受容できるか。自動運転という文明はどうあるべきか、それを支えるインフラはどうあるべきか。自動車産業で高い競争力をもつ日本こそ、自動運転の未来について、もっと積極的に提言していく必要があるという。
『物語 アラビアの歴史/知られざる3000年の興亡』(蔀 勇造著、中公新書)は、アラビアの歴史を通観する、ボリュームのある1冊。約3000年にわたる歴史の中で、イスラームの勃興が世界史の大きな転換期となったことは間違いない。しかし、これまで「それ以前」、すなわち先イスラーム期のアラビア史についての概説は、日本にはほとんどなかったという。先イスラーム期(紀元前9世紀前後から西暦7世紀ごろ)、イスラーム期(ムハンマドが布教を開始する西暦7世紀ごろから現代)の2つに分けられる大きな歴史の流れを軸に、石油資源で繁栄する現代につながる諸民族、諸国家の興亡を描く。
┃グローバルに注目を集めるK-POPの魅力
2012年以降、日韓関係の悪化と共に韓流ブームは去った、と思われていた。しかしK-POPは今、日本の若者の間だけではなく、グローバルに発信され人気を集めているという。『K-POP/新感覚のメディア』(金 成玟著、岩波新書)は、世界が注目するひとつのジャンルとなったK-POPの誕生から現在まで、韓国社会と音楽産業がどのように変容してきたかを、韓国生まれの著者が論じている。
著者は、韓国が国を挙げて、いち早くデジタル音楽市場に合わせて業界を再編してきたことも、K-POPの世界発信を後押ししていると指摘する。CDにこだわらず、生産・流通のプロセスをデジタル・マーケットを中心に再編し、海外市場をターゲットにした活動を積極的に繰り広げた。iTunes、YouTubeといった「新しいプラットフォーム」を活用し、グローバルに情報を発信し続けている。K-POPを通じて映し出されるソーシャル・メディア時代の音楽空間とは何か、ポップとは何か、世界的に支持され注目を集めるK-POPの「新しさ」とは何なのかを紹介する。
『日本百銘菓』(中尾隆之著、NHK出版新書)では、観光や出張の土産、里帰りに欠かせない日本全国の銘菓の数々の中から、自ら食べ歩き、取材を重ねてきた著者の独断で「これぞ」と選び抜いた100品を紹介している。
歴史ある老舗の和菓子や、最近人気の和洋折衷菓子もある。生姜、黒砂糖、柚子、ニッキ、梅、抹茶
など、香りの記憶がよみがえる。次々と新商品、期間限定商品が生まれては消えていくお菓子の世界だが、味も包装も「変わらない」「変えない」ことが重要な、銘菓特有の世界は一種独特だ。仙台の「萩の月」、札幌の「白い恋人」など、今では全国で知られる人気菓子がヒットするきっかけが「飛行機の機内食に採用」だったというのが興味深い。
※2018年7月刊行から