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承認欲求の時代、心や脳を疲れさせない技術

| 承認欲求の時代、心や脳を疲れさせない技術

『職業としての地下アイドル』
姫乃たま
(朝日新書)

『職業としての地下アイドル』(姫乃たま著、朝日新書)は「現役地下アイドル」によ る「アイドル論」。AKB48などメディアに多く出演してメジャーレーベルからCDを出す、いわゆる「アイドル」たちの活躍の場を「地上(メジャー)」とすると、「地下(インディーズ)」にいる女の子たちの居場所は主に秋葉原のライブハウスだ。

メジャーアイドルを目指す女の子と「地下アイドル」を目指す女の子は何が違うの か。「地下アイドル」を応援し続けるファンの心理、「オタク文化」についても解説し、現代若者文化論としても読める。最近の若者を語る上で欠かせない、「承認欲求」という心理について、著者は過去の自分自身とも向き合いながら赤裸々につづっている。

一方、SNSの普及によって、現代人の「承認欲求の肥大化」が急速に進んだと指摘す るのが『「本当の大人」になるための心理学 /心理療法家が説く心の成熟』(諸富祥彦著、集英社新書)の著者。心理カウンセラーの著者は、「ネットの世界には、『私を認めて』といった類の承認欲求があふれかえっている」としている。

『「本当の大人」になるための心理学』
心理療法家が説く心の成熟
諸富祥彦
(集英社新書)

今の日本社会では、「いつまでも若々しく あること」「元気に活動すること」といった外的な価値ばかりが偏重され過ぎていて、中年期以降の内面的な成長、成熟がないがしろにされ、「本当の大人になる」ことが難しくなっ ている、としている。未熟な人ほど、他人からの評価を求め、リスペクトや承認を過剰に求める。承認欲求が満たされないために、中高年になっても、自分のことを価値がある存在と思えない状態が続く。本書では、こうした状態から脱し、人生の後半に向かって人生をどう充実させていくか、孤独とどう向き合って行くかのヒントを示している。


『科学の知恵/怒りを鎮める うまく謝る』
川合伸幸
(講談社現代新書)

『科学の知恵/怒りを鎮める うまく謝る』(川合伸幸著、講談社現代新書)では、心理学・ 認知科学の研究者である著者が、実証的な事実に基づいた理論による「効果的な謝罪」の方法を指南する。怒っている人が求めているのは必ずしも「謝罪」だけではないのに、攻撃から自分を守るために安易に謝罪し、かえって逆効果になることもよく見られる。怒りはどのようなもので、どうすればうまくコントロールできるのか。実験や調査による最新の研究に基づいて、怒りを感じる原因、謝れない理由、仕返しをしたいと感じる理由、赦しとはどういう感情か、などについて解説している。

『人間関係の疲れをとる技術/自衛隊メンタル教官が教える』(下園壮太著、朝日新書)の著者は、陸上自衛隊初の「心理幹部」として、ときに過酷な環境に置かれる隊員のメンタルヘルス教育、カウンセリング、自殺防止を担当していた。本書では、人間関係などのストレスで心が疲れ、嫌なことがあったときの対処法を「技術」として紹介する。

人間関係で嫌なことがあったり、イライラしているなと感じたりするのは、疲れているときが多い。まずはしっかり休んで睡眠をとること。自分の疲れや怒りをためこまず、 こまめに対処する方法を「技術」「スキル」と して獲得することの重要性をとく。

自分の感情をケアするための「スキル」 は、スポーツや楽器、語学の習得のように何度も繰り返し練習することが必要だという。本書で紹介する方法を数回試して「自分には向いていない」と判断するのではな く、「最低40回」はやってみて欲しい、というのがいかにも元自衛官だ。最低40回は 相当大変そうだが、長年染み付いた考え方のクセ、感情のクセはそれぐらい意識しないと変えられない、ということなのかもしれない。

ストレスの多い現代人に、疲労を防ぎ、脳のパフォーマンスをどう上げていくかを指南するのが、疲労のメカニズムを科学的に解説したシリーズの第3弾、『すべての疲労は脳が原因3/仕事編』(梶本修身著、集英社新書)。医師である著者も、ストレスの対 処法のまず第一は自身の疲労を自覚し、睡眠不足を解消すること、としている。

仕事のパフォーマンスを上げるためには、常に100%の力で取り組むべき、という発想をまずは捨て、「60%の力で70%の結果を出す」ことを目標にすべきだとしている。疲労をためないために要領よく脳を使い、「手を抜くのが当たり前」という発想への転換で、長期的には安定した状態で末永くパフォーマンスを出すことができる。「仕事を効率化するための、脳疲労をコントロールするスキル」について脳科学的な知見をベースに解説している。

※2017年9月刊行から

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湯原 葉子
連想出版編集部が出版する ウェブマガジン「風」編集スタッフ。新書をテーマで連想検索する「新書マップ」に2004年の立ち上げ時から参加。 毎月刊行される教養系新書数十冊をチェックしている。 ウェブマガジン「風」では新書に関するコラムを執筆中。