新しい学年度が始まり、ワシントン州は全公立学校でリモートでのスタートとなりました。州のクリス・レイクドル教育委員長からの学区長と校長宛ての手紙には、「To be very clear, it is my expectation that schools will open this fall for in-person instruction.」と目立つ字で書かれており、一刻も早く対面授業再開のめどを付けたいという教育者としての希望と指標が汲み取れます。何が子どもたちにとって必要か、子どもたちが人間として豊かに成長していくうえで何が大切かと考えると、どんなにハイテクを利用しても対面教育に勝るものはありません。たとえば、マイクとレコーディングでアレンジされて聴くシンフォニーやオペラは素晴らしいものですが、ホールで直に聴くものとは比べられません。生のものは耳だけでなく音の振動が体を通して心に伝わります。人間は五感を使い、感動し、体感して学んでいきます。

当校は幼小のBCA、中高のWPS、そしてBCA土曜学校がありますが、2月末に州で新型コロナ感染による米国初の死者の報告があった次の日には閉鎖。学校を閉じてリモート学習に切り替えた全米初の教育機関となりましたが、まだ正体の見えない相手に対しての決断でした。そして9月、どこよりも先に学校を開け、対面授業を再開しました。十分に安全対策を取り、先生、保護者、子どもたちひとりひとりがコントロールしながらの学校再開です。

再開に当たってはいろいろな学習方法が検討され、大きくオンライン授業、対面授業、ハイブリッド授業の3つがありました。オンライン授業には ビデオ通話でのリモート授業、動画配信方式の授業の2つがあります。また、ハイブリッド授業には、オンラインと対面を交ぜるものと、教室の子どもたちと対面授業をしながら自宅からの子どもたちにライブストリームで同時発信するシンクロナス授業の2つがあります。それぞれに長所と短所があり、また生徒数や教室数によっても変わってきます。実施にはTeamsやZoomといったバーチャル教室設定アプリ、家庭のインターネット環境、受信するパソコンやタブレットが必要になります。私たちが選んだ学習体系であるリモート授業、対面授業、シンクロナス授業を以下に簡単に説明します。

リモート授業

1日6時間、Teamsによるバーチャル教室で先生が十数名の子どもたちを担当、指導する。「目を守ろうタイム」など目を疲れないようにする工夫や、先生と一緒に取るランチの時間も。低学年の子どもたちは保護者の方々に協力してもらいながらの授業。みんなで自由に話せる時間やゲームを取り入れながらソーシャル・スキルを高める。子どもの集中力や注意力、先生のエンターテインメント的スキルが必要となる。

対面授業

従来の教室でのクラス。個人専用の文房具、手洗い、空間維持、ランチでのバリアなどの安全対策や、教室内の設備の消毒、登校時の健康チェックを徹底している。子どもたちにとって友だちや先生と過ごす1日は楽しく、笑い声が絶えない。生徒数は制限される。

シンクロナス授業

教室の子どもたちと自宅から受ける子どもたちをつなげることができ、自宅参加の子どもたちに教室の臨場感を伝えられる。子どもたちの健康状態に応じて対面授業とリモート授業の切り替えが可能。自立学習のできる小学中高学年から行える。

今は試されている時期です。自分のできることをして助け合いながら、チーム力で乗り切っていくのが唯一のプラン。変わらない子どもたちの笑顔が、私たち学校スタッフを勇気付け、奮い立たせてくれています。