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特集 シアトルの若手日本人シェフ

 


「シアトルで最先端の和食を」
公邸料理人
對馬 賢一朗さん

つしま けんいちろう
■オーストラリアとイタリアの日本料理店でシェフとして働き、ロシアのハバロフスクとシアトルの日本国総領事館で公邸料理人を務める。豊富な海外経験を生かしたグローバルなレストラン経営が今後の目標。休日の友人とのホームパーティーではもれなく調理担当。

日米両国の要人や外交官、賓客をもてなす場所として、外交活動の重要な役割を果たす日本国総領事公邸。そこで行われる会食の鍵を握るのが、厨房に立つ「公邸料理人」だ。2015年から在シアトル日本国総領事館で公邸料理人を務める對馬賢一朗さんは、いわば「味の外交官」だと言える。

世界各国での活躍

「幼少期に海外で暮らしたこともあり、いつか海外で仕事がしたいとずっと思っていました」と語る對馬さんは、30歳という若さからは想像できないほどの豊富なキャリアの持ち主だ。高校卒業後、約6年間におよぶ日本のレストランでの下積みを経た後、2011年にオーストラリアのシドニーで和食レストランの料理長を務めた。オープニング店舗だったこともあり、メニュー開発や食材の仕入れ先、使用する食器の選定など、すべて自分で行った。「ゼロからのスタートだったので、大きな自信になりました」。その後、2013年よりロシアの在ハバロフスク日本国総領事館で公邸料理人の職に就いた。「ロシアでの任期を終え、イタリアの日本料理店で働いている時に、在シアトル日本国総領事館での公邸料理人の誘いを受けました」

料理にかける熱い想い

愛媛県兵庫県の物産レセプションにて

公邸料理人である對馬さんの仕事は、総領事公邸で提供される料理を作ることだ。少人数の会食から、数百人規模のレセプションでの食事もすべて一人で用意するため、大人数の来賓を迎えるイベントの前はほとんど眠れない時もあるという。その一方で、頻繁に行われる少人数の会食では、来賓について下調べを行った上で料理の構想を練るといった「対個人」の対応を取る時も。「レストランと違って、どのような人がいらっしゃるのかを事前に知っておけるので、献立を作る際の参考にします」。大村昌弘総領事に献立の承認を得た後、食材の調達段階へと移る。早めの準備が欠かせず、2カ月ほど前から動き始めることがほとんど。「今まで同じ献立を出したことはありません」と、一度きりの料理に込める想いは熱い。

シアトルで生み出す新しい日本食

サケライブシアトルにて

旬の食材や生の魚介類などは、日本から直接仕入れることも多いのだそう。「シアトルには新鮮な魚介がたくさんありますが、日本でしかとれない魚にもトライしてほしいですね」。シアトルは日本の食文化に慣れ親しんでいる人が多く、どんな和食でも受け入れられやすいという。他の国に比べて個人の好き嫌いを気にする必要がない分、調理法にこだわっている。「和食には特定の調理法しかないと思ってほしくないので、新しい食べ方を模索しています」。例えば「エスプーマ」と呼ばれる、ありとあらゆる食材を泡状にする調理法など、新しい日本食の提供を試みている。「ロシアの人たちは保守的で、餡子が苦手な人が多かったけれど、シアトルの人たちは何でも試してくれます。そんなシアトルで最先端の和食を広めていきたいです」

毎日来ても健康でいられるレストラン

本物の桜を使用したパフェスタイルの桜餅見た目も味も楽しめる春らしい一品

料理人としての今後の目標は、「健康」「食育」「バイリンガル」をコンセプトにした和食レストランを日本と海外でオープンすることだ。「外国人に対してのホスピタリティがあるお店って、あまり多くないんです」と語る對馬さんは、メニュー記載から接客、料理の説明など、英語や他の言語での対応も可能なレストランを目指す。海外の店舗では、その国や地域のローカル食材を料理に取り入れ、いかに和食に親しみを持ってもらうかが課題だ。外食は贅沢をするものではなく、健康や食育を学べるようなものに変わっていくべきだと語る。「健康を第一に考え、食材の選別から食事のバランスなど、食全般に関して啓蒙できるようなお店にしたいです」。若手ながらも豊富な経験と明確なビジョンを持っている對馬さん。今後も世界をまたにかける料理人として、ますますの活躍が期待される。

食への取り組み
在シアトル日本国総領事館

在シアトル日本国総領事館では、日本の食文化をシアトルで発信していくイベントを積極的に開催している。
2月21日には、日本酒普及のためのイベント「サケ・ライブ・シアトル(Sake Live Seattle)」が行われ、日本酒レクチャーの後、日米の日本酒と和洋折衷のペアリングフードがふるまわれた(共催:JETROサンフランシスコ)。
3月16日には、今年から本格的な適用開始となる「食品安全強化法(FSMA)」に関するビジネスセミナーが行われた(共催:JETROシカゴ)。各種規制の概要や施行スケジュール、今後必要な対応といった情報をアメリカ国内の食品輸入関係者にシェアすることで、日本産食品のさらなる普及を目指す。同日午後には愛媛県・兵庫県の物産展をかねたレセプションが開催された。

601 Union Street, Suite #500, Seattle, WA 98101
開館時間:月~金
領事部:9am〜11:30am、1pm〜4:30pm
広報文化センター:9am〜11:30am、1pm〜4:45pm
☎︎206-682-9107
www.seattle.us.emb-japan.go.jp

 

 

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「自分が食べたいと思えるものを出さなければ、お店を持つ意味がない」Adana / オーナーシェフ 中島 正太さん