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特集 シアトルの若手日本人シェフ

 


「自分が食べたいと思えるものを出さなければ、お店を持つ意味がない」
Adana / オーナーシェフ
中島 正太さん

なかじま しょうた
■辻調理師専門学校卒業後、大阪の割烹「さか本」で修行。現在はキャピトルヒルの和食店「Adana」のオーナーシェフを務める。数多くのメディアで活躍が取り上げられ、全米放送のテレビ番組「Iron Chef Gauntlet」にも出演予定。放送は4月16日午後9時から。油絵が隠れた趣味で、Adana 店内に作品が飾られている。

2015年にキャピトルヒルでオープンした懐石料理店「NAKA」は、今年2月に「Adana」と名称を変え、アットホームな和食レストランへと生まれ変わった。オーナーシェフを務める中島正太さんは、シアトルはもちろん全米に向けて和食文化を発信している。

料理のルーツは「おふくろの味」

中島さんは日本で生まれ、間もなくして家庭の事情でシアトルへ渡った。中学でふたたび日本へ、高校生になったところでシアトル、その後また日本と、アメリカと日本を行ったり来たりの生活を送ることになる。そんな中島さんの日本人としてのアイデンティティを支えたのが、他でもないお母さんの料理。「東京の下町出身である母が、毎日僕たち家族のために食事を作ってくれました。白いご飯、メインのおかず、小鉢数品に汁物がついた昔ながらのていねいな和食です。僕の料理は母の影響が一番大きいですね」

料理に人生をかけようと決意した中島さんは、18歳で調理学校の名門、大阪の辻調理師専門学校に入学。北新地の割烹「さか本」での下積みを経た後、シアトルに戻ってビジネスの勉強をスタートした。レストランのコンサルティング事業に携わり、元楽天イーグルス取締役の米田純さんらと共に「らーめん山頭火」の立ち上げや、州をまたいだ様々なレストランのマネージメントを行った。

思わず「うまっ!」と言ってしまう家庭料理

2月のコースメニューの一品肉じゃが

日本で培った調理技術と、アメリカで培ったビジネススキルを備える中島さんは、満を持して2015年にキャピトルヒルの懐石料理店「NAKA」をオープン。オーナーシェフとして腕を振るった。同店は先月「Adana」に名称を改め、日本の家庭料理を提供するカジュアルなレストランにリニューアルした。「Adanaは日本語の『あだ名』、ニックネームです。その名の通りリラックスして楽しめるのがコンセプトで、こちらの方がずっと僕に合っています」と話す中島さんの笑顔は明るい。「あったかい家庭料理って、なんかいいじゃないですか。僕が最終的に求める料理はそこなんです。食べた人が思わず『うまっ!』って言っちゃう料理を作りたい。Adanaならそれができると思っています」

中島さんの料理のお手本であるお母さんは、毎週Adanaを訪ねて食事するそう。「母はいつも料理の感想をくれます。これは良かった、これはぬるいとか。文句を言われることはしょっちゅうで、毎回喧嘩になるんですけど(笑)」

ルールに縛られないスタイル

お母さんの得意料理をアレンジしたサーモンとナスの南蛮漬けPickled King Salmon and Japanese Eggplant3月のコースメニューの一品

家庭料理のAdanaでは、中島さんのこだわりをそのまま料理に反映できるのだとか。「今日は山へキノコ狩りに行ってきました。立派なトリュフがとれたので、今夜デザートを注文してくれた方にはオマケで僕たちが席まで行って、このトリュフをバーッとスライスしようと思っています」。懐石料理のNAKAではできなかった、ルールに縛られないスタイルが大きな魅力だ。

コースメニューには旬の食材を使用し、月ごとに内容を変えていく。「メニューはスタッフ全員で考えています。和食出身のシェフは僕だけですが、みんなNAKAの時からずっと一緒に働いているので、日本の味をちゃんと分かっています。メニューを決める時は毎回楽しいですね」

文化の違いにブレない料理

カツサンドKatsu Sando $12

アメリカで和食を提供するにあたって、味のアレンジは一切していないと中島さんは断言する。「日本の味そのままです。自分が本当においしいと思った料理をお客様に出さなければ、お店を持つ意味がないと僕は思っています」と、味への確固たる信念を見せる。

しかし食材は違う。ノースウエストでしか手に入らない素材を使って日本の味を表現したいのだという。「例えばアバロニ・マッシュルームや、キャバゾンといった魚は日本ではほとんど知られていません。でも食べてみるとすごくおいしいんです。これを和食に使わない手はないでしょう」。日本とシアトルの両方にバックグラウンドを持つ中島さんだからこそできる、文化の違いにブレない姿勢だ。

中島さんは最後に「この水、おいしいでしょう?」と取材班に尋ねてきた。何か特別なことをしているのかと質問すると、「愛情です!」と満面の笑み。愛情こもった母の味をルーツにする中島さんの料理は、今後シアトルだけでなくアメリカ全土で認められていくことだろう。

まぶし丼Mabushi Bowl $12

和食レストラン
Adana

キャピトルヒルでアットホームな和食を提供するレストラン。広々とした店内はダイニングとラウンジに分かれており、ダイニングでは季節に合った三品のコース料理、ラウンジでは「カツサンド(Katsu Sando $12)」や「まぶし丼(Mabushi Bowl $12)」などの単品メニューが注文できる。バーカウンターではユニークなカクテルやワイン、芋焼酎、日本酒などバラエティ豊かなアルコールを揃える。

1449 E Pine St, Seattle, WA 98122
営業時間:毎日5pm〜12am
ハッピーアワー5pm〜7pm
☎206-294-5061
www.adanaseattle.com