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食べることは生きること。~PLENTY USA CEO 米田 純さん~

 

 

”食べることは生きること。”

 

ラーメン・ブームを牽引する「山頭火」シアトル進出の仕掛人、プレンティUSA(レストラン経営・レストランコンサルタント)の米田 純社長が4月にキャピトルヒルで炉端居酒屋「JUNKICHI」をオープン。シアトルでの日本食ビジネスについて、これまでの経緯を含めて話をうかがいました。

取材・文:磯野 愛 写真:上田あずさ

東日本大震災での炊き出し経験が人生の転機に

2011年、私が東北楽天イーグルスの球団代表を務めているときに東日本大震災が発生し、被災地・仙台の地元球団として、さまざまなボランティア活動に取り組みました。仙台出身の山頭火・菊田伸一社長とプライベートの友人関係だったことから一緒に炊き出しを行ったことがありました。被災した皆さんが涙を流しながら「おいしい」と言ってラーメンを食べる姿を見て、いかに食べることが生きることそのものに直結しているのか、そして食べることがこんなにも人を幸せにできるものかと、ひしひしと実感しました。

2013年には楽天が悲願の初優勝を果たし、ひとつ気持ちの区切りが付いたこともあったのだと思います。球団の仕事は非常にやりがいがありましたが、私はプロ野球選手ではないので、野球で飯を食ってきたわけではありません。50歳を目前にして、人生最後となる仕事は何なのか。そう考えたとき、やはりビジネスマンとして、自分の事業を起こしたかった。そんな思いも相まってこの世界に飛び込みました。やるからには「食」で日本のみならず世界を元気にしたい、そしてグローバルに活躍する日本の若者にそのフィールドを提供したい、そんな気持ちでプレンティを設立し、2014年には山頭火ベルビュー店が誕生しました。

外食産業での下積みや勤務経験はありません。球団を立ち上げたときも、選手・監督・スタッフ・球場さえもない、ゼロからのスタートでした。苦労の連続となりましたが、自分の専門であるマーケティングの視点や、優秀なスタッフをそろえてひとつの店を運営していくというチームづくりの経験を持ち合わせていましたので、不思議と不安はありませんでしたね。実は、こっそり菊田社長に山頭火仙台店での修行を申し出たことがあったのですが、残念ながら叶いませんでした(笑)。

 

世界中で真の日本食が求められている

ラーメンの良いところは店によって味が違うこと。スープ、麺、具材など、暖簾ごとにその世界観は全く異なります。山頭火は、アメリカ人が苦手とされる熱々のスープも含め、日本の本物の味をそのまま持ってくることにこだわりました。ラーメン店がどんどん増えてシアトルの業界全体が盛り上がっていることもあり、おかげさまでビジネスはとても順調です。昨春にはユニバーシティー・ビレッジに山頭火シアトル店もできました。その一方で、日本食といえば寿司、そしてラーメンと来て、さあ次はなんだろう?と、ずっと模索していました。4月にオープンした炉端居酒屋のJUNKICHIは、その第3のアイテムを探す場にしたいというマーケティング的な発想もあって開店しました。

 

炉端居酒屋 JUNKICHIの魅力とは

多様な食材と調理法を手軽に楽しめる居酒屋は、日本の食文化そのもの。また、プレンティとして、山頭火というマニュアルのしっかりした実力店の次には、将来フランチャイズ化してアメリカだけでなくアジアにも展開できる独自ブランドを立ち上げたいという思いもありました。

炉端という形態は居酒屋の王道で、日本の伝統的な居酒屋のあり方のひとつです。地域の中でどのように受け入れられていくか最初は不安もありましたが、ふたを開ければ、アメリカ人が日本酒片手にカウンターでしっぽり飲んでいたり、仲間とワイワイ食事を楽しんでいたりと、まさに日本の居酒屋でよく見る光景のよう。非常に手ごたえを感じています。炉端居酒屋らしく、ギンダラ西京焼きや鮭の塩麹焼き、焼き牡蠣などが人気ですね。

 

目標は世界に1万軒のレストランを展開すること

4人から始まったプレンティUSAも、今では170人の従業員を抱える会社になりました。自宅はベルビューにあるのですが、日米を常に移動する生活で、プライベートより今は仕事が中心です。試食を兼ねて、ほとんど店で食べていますが、たまに自炊もします。最初、アメリカに来た頃は社員と一緒に社宅で暮らしていたので、まるで大学生の寮生活のように、私が手料理を振舞うこともありました。しばらく前になりますが、元楽天の選手であるシアトル・マリナーズの岩隈久志投手とニューヨーク・ヤンキースの田中将大投手の試合は観に行ったことがあります。これは感無量でしたね。

プレンティの目標は世界で1万軒のレストランをプロデュースすることです。すでにアメリカだけでなく、アジアでも事業を展開しています。先般シンガポールの会社を買収し、うどんとトンカツの店のプロデュースも始まりました。今年で54歳。

ふと、「あと何年、こんなふうに動けるかな……」と思うこともありますが、とにかく1日も無駄にせずに突き進みたいですね。シアトルに留学している学生さんもたくさんいると思いますが、積極的に海外に出て活躍して欲しいと思います。若さはそれだけで大きな武器です。勇気を出して、いろいろなことにどんどんチャレンジしてみてください。もし「食」の世界に興味があったら、ぜひ一緒に仕事をしましょう!

米田 純■1953年、神奈川県中郡二宮町に生まれる。野球漬けの子ども時代を送り、早稲田大学では体育会準硬式野球部に所属。卒業後、西武百貨店に入社し、池袋店・紳士服売り場を経て、商品企画や店舗運営、販促など本部でマーケティングに従事。楽天に転職後は百貨店での業務経験を生かし、楽天市場ユーザーマーケティング部門にて勤務。楽天のプロ野球球団設立に伴い、その創業メンバーとして取締役球団代表も含めて9年間の球団運営を全うした。2013年にプレンティUSAを設立、同代表となる。

 

炉端居酒屋「JUNKICHI」 の人気メニュー

新鮮な食材と料理人のこだわりが織りなす品々。

<strong><span style=font size 12pt>ギンダラ西京焼$25<span><strong>

自家製の西京味噌に漬けたギンダラを備長炭で丁寧に焼いた1品。自慢の味噌床には塩麹とゴルゴンゾーラチーズが入っていて、優しい味を引き出している。

 

<strong><span style=font size 12pt>和牛すき焼き$29<span><strong>

神戸ビーフの和州牛をすき焼きで堪能できる。肉のおいしさを味わうには、ミディアムが最適。希望すれば、オーガニックの生卵も付けられる。

 

<span style=font size 12pt><strong>イカ丸焼き$14<strong><span>

刺身用の新鮮なヤリイカを丸ごと焼き上げている。ややレアに仕上げることで、ヤリイカの柔らかさが楽しめるように工夫。素材の新鮮さと焼きの技術に自信があるからこそのメニュー!

 

<strong><span style=font size 12pt>松花堂弁当$25<span><strong>

刺身・焼物・揚物・煮物がそろう弁当が、ランチでいちばんの人気商品♪

炉端居酒屋 JUNKICHI
224 Broadway Ave. E., Seattle, WA 98102
☎206-712-7565
営業時間:月~土11am~11pm(平日2pm~4pm閉店)、日11am~9pm
ウェブサイト

 

米田純社長のインタビューを英語で読む:

https://napost.com/japanese-restaurateurs-jun-yoneda-plentyusa/

 

磯野 愛
2020年6月まで北米報知社でセールス・マネジャーを務める。北海道札幌市出身。2017年に夫の赴任に伴ってシアトルに渡るまでは、日本で広告代理店に勤務し、メディア担当、アカウント・エグゼクティブとして従事。ワシントン大学でMBA取得後、現在はシアトル発のスタートアップ、Native English Instituteのマーケティング担当として日本市場参入準備に携わる。趣味はテニスで、大会(とその後の打ち上げ)の再開を心待ちにしている。