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INTERVIEW:フジマツ・コーポレーションCEO(宇和島屋元CEO、ソイソース・北米報知発行人) トミオ・モリグチ

変わるインターナショナル・ディストリクトと富士松ビレッジ建設の意義

ここ数年、インターナショナル・ディストリクトの雰囲気は少しずつ変化している。2016年、ひと足先に宇和島屋が同シアトル店向かいに古いホテルを再開発して建設した6階建て複合商業施設「パブリックス」は、テレビ番組「料理の鉄人」への出演で知名度を誇る森本正治シェフがプロデュースするラーメン居酒屋のモモサンや、人気の点心レストランであるドウ・ゾーン・ダンプリング・ハウスなどがテナントとして入店し、活況だ。「どの店舗も大成功。うれしいことです。こういう新しい店がもっと必要です」。富士松ビレッジの着工は早くとも2021年8月になりそうだ。歴史地区であることから、シアトル市のインターナショナル・スペシャル・レビュー・ディストリクト理事会による建築デザイン審査を通過する必要がある。着工が無事決まれば、台湾のダ・リ・ディベロップメント社と提携し、5th Ave. S.沿いには低層のビルを、その背後に高いタワーを、2024年完成を目指して建築する予定だ。「5th Ave. S.に接して高い建物を建てると『ビルの谷間』ができてしまう。それは避けたいので、そこは低層の建物と広場にし、小売店が並ぶショッピング・ゾーンにしようと考えています」

行きつけの中華料理店タイタンで現店長のハリーチャンさんとインターナショナルディストリクトで1935年に創業した同店はブルースリーが常連だったことで知られるモリグチは中華系コミュニティーとの結び付きも強い

シアトルで急速に進むジェントリフィケーション(都市内部の再開発・高級化)。賃貸居住者が多いインターナショナル・ディストリクトの地価上昇で現住民が押し出される懸念から、コミュニティーから建設反対の動きも出ている。その問題については十分配慮したいと、モリグチは話す。一方で、この地域にある小売店やレストランなど商店街全体の維持・再活性のためにも、中間・高所得層の買い物客をもっと引き付けるべきというのが、モリグチの長年の主張だ。「このコミュニティーは、変化しなければなりません」。パブリックスの開発は、その出発点として成功したと見ている。富士松ビレッジには、広い駐車場も設ける意向だ。これは近くの小規模な店にとっても朗報だろう。「KOBOアットヒゴ、MOMOなど、駐車場がない近隣の日系小売店を直接支えることができます。宇和島屋の広大な駐車スペースにしても、地域全体にとって価値のあること。駐車場を節約すれば、お金を節約することはできるかもしれない。しかし、車で来るお客さんも呼び込もうと思えば、駐車場はどうしても必要」。数年後にはインターナショナル・ディストリクトが大変貌を遂げるだろうと予測するモリグチは、この地域が個性を失うことなく変化に対応できるよう備えるべきとも訴える。「3年後はインターナショナル・ディストリクトとベルビュー間のライトレールが完成し、電車で簡単にベルビューまで行けるようになります。電車に飛び乗って20〜30分でベルビューに行けるなんて、驚きです。大企業はベルビューにどんどん進出するでしょう。政府はこのように巨額を費やして公共交通機関を充実させ、各地を行き来できるように後押ししています。これは素晴らしいこと。とはいえ、シアトルの多くの人々はまだまだ車を運転している。やはり駐車場も必要です」

自身の不動産業務ほか北米報知社社長北米報知財団理事長としての仕事もこなす多忙な日々

富士松ビレッジに入るホテルについては、まだ検討段階にある。「すでにビジネスホテルから、スパもある4つ星、5つ星ホテルまで、あらゆるところからオファーがあります。ホテル経営側からの提案に耳を傾け、コミュニティーのニーズ、経営的判断などから考えていく中で、いずれふさわしいホテルが決まるでしょう」。コミュニティーに「人と出会う場所」を生み出したいという思いから、ホテル経営側には、地元の団体が手頃な費用で利用できる会議室を用意するように求めるつもりだと明かす。

ホテル以外の居住空間として、上層階にはコンドミニアムでなくアパートを建設することが決まった。「コンドミニアムとアパートは考え方が少し違います。コンドミニアムの場合、順調に売れればそれで自分たちの手から離れていきます。しかしアパート建設の場合、自分たちの資産として長期的に運営するため、コミュニティーとの接点を継続していくことができます」