シアトルの知恵ノート
知っておくと暮らしが豊かになるヒントを、シアトルで活躍するさまざまな専門家の方に聞きます。
QOLを向上させる、正しい姿勢が導く健康な体作り
姿勢の悪さは指摘されないとなかなか気づきにくいもの。なぜ猫背になりやすいのか、そしてその改善法とは? その原因と具体的な対策を紹介します。
ウェルネスワン・オブ・イーストゲート
小畑幸輝D.C.■ 米国公認ドクター・オブ・カイロプラクティック。テキサス州パーカー・カイロプラクティック大学卒業。ウェルネスワン・オブ・イーストゲート院長。2000年、シアトル・サウンダーズ選抜女子チームのカイロプラクターを務める。頭痛、腰痛、肩こり、四十肩、膝の痛み、交通事故によるむち打ち、スポーツ障害、ねんざ、関節痛などの診断・治療を専門とし、米国でも最新の椎間板減圧装置を使った椎間板ヘルニア治療も行う。
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QOL向上の鍵は重力による体への負担軽減
私たちの体は地球上で生活する上で常に重力と闘っています。どんな体勢であっても、体には何かしらの負担が常にかかっているのです。たとえば、立っている状態を100パーセントとすると、寝ていても25パーセント、座っているときには140パーセントもの負担がかかっているといわれています。
高いQOL(クオリティー・オブ・ライフ) を保つためには、健康な体作りが欠かせません。その健康維持の鍵となるのは「重力による体への負担をいかに減らすか」「目には見えない体へのストレスをいかに最小限に抑えるか」の2点だといえるでしょう。
では、どのようにしてこの負担を軽減できるのか。その答えは「姿勢」にあります。
■良い姿勢
重力からのストレスが最小限に抑えられ、体に無理のない姿勢。体を横から見た時に耳、肩、腰、膝、くるぶしが一線上に並んだ状態で、足底がしっかり地面に着き、足幅は肩幅とほぼ同等に開き、背筋が伸びた状態
■悪い姿勢
首と肩の位置が前に出て、猫背になった状態
悪い姿勢が体に及ぼす影響
現代は子どもから大人まで、毎日コンピューターに向かう生活をしています。モニターの前で集中していると、自然と首の位置が前のめりになり、肩も前に出やすくなります。これが猫背の始まりです。この姿勢が続くことで、本来あるべき首のカーブがなくなり、ストレートネックが起こります。頭の重さは体重の約10パーセントで平均5キロほどです。首が前傾し肩より2.5センチ前に出ると、その負荷は2倍の10キロ、5センチなら3倍の15キロにまで跳ね上がります。そうすると首や肩だけでなく、背中や腰の筋肉までが首を支えるために負荷を受けるようになるのです。
さらに、直立した状態で先に述べたような悪い姿勢でいると、頭の重さを支えるために腰に負担がかかり腰痛につながります。腰痛が悪化し腰骨が曲がると、テコの原理で骨と骨の間にある椎間板が外に押し出され神経を圧迫し、慢性的な腰痛や椎間板ヘルニアにまで至る可能性もあるのです。
意外に思われるかもしれませんが、猫背は内臓にも悪影響を及ぼします。特に肺に多大な負担がかかり、呼吸が浅くなりがちです。猫背では体のコアの筋力が衰え、横隔膜を使って深く呼吸をすることが難しくなります。肺を最大限に広げることができないため肺活量が減少し、健康のバロメーターとされる最大酸素摂取量も最大30パーセント減少することに。酸素を十分に体内にとり入れられなくなると体力が低下し、持久力の低下へとつながっていきます。元気な人に姿勢の悪い人が少ないのは、姿勢の良さに健康の秘訣があるからです。
良い姿勢を保つコツ
正しい姿勢を維持するためのコツを紹介します。まず、みぞおちを引き上げ、腹筋に軽く力を入れ、横から見て耳が両肩の真上にくるように意識しましょう。それだけでも肺への負担が軽減し深呼吸がしやすくなるはずです。そして一番大切なポイントは、この時に肩の力を抜いて肩を落とし、体のコアの筋力で姿勢を支えること。肩は常にリラックスした状態を保つことが重要です。着席時には、腰の後ろにクッションなどを入れて腰のカーブを支えると腰痛予防に有効でしょう。
これらのポイントを心がけるだけで体への負担を最小限に抑えられ、元気な体作りが身近になるでしょう。姿勢は日々の意識次第で確実に変えることができ、その選択はより良いQOLを築くきっかけとなります。ぜひ、今日から実践してみてください。