国際結婚をしている人、考えている人必読!日本とは少し違うアメリカでの離婚について、経験者や専門家の声、専門機関の情報を交えてレポートします。
※以下の内容は参考情報として掲載しています。実際の国際離婚手続きは個々のケースにより異なりますので、弁護士などの専門家、または専門機関にお問い合わせください。
取材・文:小林真依子、ハーモニー・ケリー、ハントシンガー典子
配偶者から肉体的、精神的に暴力を受けていることに気付いたら、どうすれば良いでしょうか。一歩踏み出すには勇気もお金も必要で、子どもがいればなおさら。ワシントン州には、そんなDV被害者のサポートを行っている団体がいくつもあります。そのひとつ、エー・ピー・アイ・チャヤに、DVと離婚について話を聞くことができました。
DV、性犯罪、人身売買の被害者であるアジア人を対象に、文化に配慮したサポートをシアトルで行っている団体。2014年から在シアトル日本国総領事館と提携しており、日本語でサポートを受けられる。何から手をつければ良いのか混乱している当事者から、現状を聞き、内容を整理し、進みたい道を歩むには、どんなオプションがあるのかを提案してくれる。
☎ 206-325-0325 または ☎1-877-922-4292(24時間)Eメール: info@apichaya.org
「勇気を出してサポートを求めてほしい」
安全な生活の確保のために準備を
アメリカに住む日本人は、住み慣れた故郷を離れ、留学をしたり、国際結婚をしたりと、本来サバイバル力があった人も多いはず。しかしDV被害者は、命令され、力関係で気持ちを押さえつけられる生活の中で、次第に自己決定力が弱くなり、何をするにも誰かに判断を委ねてしまう習慣ができてしまいます。そのため、サポート団体に連絡をすることさえ難しいかもしれませんが、DVを受ける生活から抜け出すために、勇気を出すことが必要です。離婚を決断したら、離婚成立までの最短期間は90日。
子どもがいれば、90日で終わることはほぼないため、1年、2年と長期の戦いになることを覚悟しましょう。法廷では全てが書面での手続きで、時間も限られています。離婚成立までの期間、必要書類を期限までにそろえ、何度も法廷へ出向いたりしなければならない上に、裁判で毎回希望通りの決定を得られるとも限りません。
裁判が長引けば長引くほど、精神的にも弱り、考えることさえ難しくなる日もあるくらい大変です。元配偶者扶養費や養育費などを受け取れる場合、そのお金も収入になりますが、仕事をして、生活基盤を整えなければなりません。サポート団体は、必要に応じてカウンセラーも紹介しています。
また、自分で離婚を決断する前に突然、法廷にファイル(離婚申請)されてしまうケースもあります。ワシントン州では、ファイルされた日から20日以内に返答しなければならないという法律があるので、サインをする前に、弁護士、またはサポート団体に連絡をして、まず何をしなければならないのかを知っておいたほうが良いでしょう。一方で離婚をしない決断もできます。その場合も、まずは安全に過ごすための計画が必要です。
- 自分のIDは手元にあるか
- アメリカの滞在資格はあるか
- アメリカで自分の銀行口座を持っているか
- 家の契約書に自分の名前もあるか
これらをすぐに確認しましょう。
さまざまなオプションから新しい未来へつながる選択を
DV被害者のサポート団体は、離婚をする人だけのためのものではありません。離婚をしない決断をしても、今までのままでいることはないのです。いろいろなオプションがあるので、それをサポート団体に聞き、自分の中の優先順位と相談しながら、自分で決断をしていくことが大切。夫婦仲が一時的にうまくいっても、またDVが再発したら、迷わずにサポート団体に連絡をしてください。
どんな決断にも大事なのは、近くにいる友だちやコミュニティーからの理解とサポートです。DV加害者は、一般的に話し上手で、気配り上手。良い仕事をしていて、収入もあります。世間体が良いことが多いのです。DV被害者が声を上げないと、その人が違う一面を持つことを周りが見抜くことは難しいのが現状です。
DV被害者は「好きになって結婚した人だから」「私さえ我慢すれば」「相手が変わるかもしれない」「子どもがいるから」「こんな良い面もある」と、いろんな理由を見つけては自分を説得している人が多いもの。家族の問題を話すのは、どんなに親しい間柄でも難しいときがあるのもわかります。恥ずかしい気持ちがあっても、被害者の限界を超えたときにやっと、「苦しい」と口にできるのかもしれません。身近に被害者がいたら、その人のためにサポート団体とつなげてあげることも大きな助け
になります。切実な言葉に耳を傾け、寄り添ってくれる人がいることは、被害者にとって大きな支え。健康で安全な生活を送る一歩につながります。
DV被害者をサポートしている団体は各地にあり、電話を通じて無料の日本語通訳を受けることもできます。こうした相談先があることを、多くの人に知ってもらえたらと思います。
あなたは大丈夫?DVセルフ診断
以下のような経験があれば、あなたはDV の被害者かもしれません。心当たりがあれば、下記サポート団体に相談を。
- 交友関係、郵便物、メール、携帯電話、車のマイレージなどを常にチェックされる。
- 生活費をほとんどわたされず、貯金を勝手に使われる。
- 終始どなられたり、ののしられる。
- 人前で恥をかかされる。
- 問題が起こると、責任転換される。
- 実家のことを悪く言い、連絡させてくれない。
- 大事にしているものを隠されたり、壊されたりする。
- セックスを強要される。
- 避妊に協力してくれない。
- 結婚をしているが、ビザや永住権をサポートしてもらえない。
- 自分が頑張れば夫婦関係がうまくいくと考えている。
- 髪の毛を引っ張ったり、殴ったり、首を絞めたりされる。
DV被害者のサポート団体
|コンセホ・カウンセリング・アンド・リファーラル
Consejo Counseling and Referral
- ☎206-461-4880
- ☎1-888-847-7205(24時間)
|ニュー・ビギニング
New Beginnings
- 206-522-9472(24時間)
|レフュジー・ウィメンズ・アライアンス
Refugee Women’ s Alliance
- ☎206-721-0243(平日8:30am~5pm)
- carlin@rewa.org
|ソリッド・グラウンド
Solid Ground
- ☎206-694-6700(平日8:30am~5pm)
- info@solid-ground.org
|ライフ・ワイヤー
Life Wire
- ☎425-746-1940
- ☎1-800-827-8840(24時間)
- info@lifewire.org
|ドメスティック・アビュース・ウィメンズ・ネットワーク
Domestic Abuse Women’s Network(DAWN)
- ☎425-656-7867(24時間)
|ジェニファー・ビーチ・ファウンデーション
Jennifer Beach Foundation
- ☎253-833-5366(平日9am~5pm)
- info@jnbfoundation.org
警察(緊急の場合)
☎911(24時間)
知っておきたい国際離婚のリアル
・国際離婚経験者による座談会
・ハーグ条約について知りたい
・専門家に聞く離婚時の心のケア、お金は?