4年制大学や大学院を卒業して米国で就職する方に一般的である「H-1Bビザ」の2018年会計年度分の申請受付が4月3日より開始されましたが、7日には枠上限である85,000件に到達したことを移民局が発表しました。これで5年連続で、最初の5営業日内で枠上限に到達したことになります。
そのさなか、H-1Bに関するいくつかの重要なポリシーが発表されています。その一つが、4月3日に移民局が発表した、H-1Bビザ不正行為発見のためのさらなる方策です。従来もH-1Bビザの不正利用に関しては、その発見のための方策がありました。例えば、申請書に記載した勤務地に移民局職員が実際に訪問して現地査察を行うサイト・ビジットと呼ばれるものです。このサイト・ビジットによって、移民局はビザのスポンサーである会社が実際に存在し、ビジネス活動をしているのか、申請受益者である外国人労働者が申請した内容で働いているのかなどをチェックしていました。今回発表された方策は、このサイト・ビジットの対象を選別するターゲット・アプローチと呼ばれる方法を取ることとしています。
具体的には、移民局は次の3つの基準にそって、サイト・ビジットの対象となるケースを重点的に選びます。
- 移民局が、商業的に入手可能なデータの中から、スポンサー企業のビジネスに関する情報を確認できないケース
- H-1B労働者に依存している雇用主(アメリカ人労働者の数に比べて、H-1B労働者の割合が高い雇用主)
- スポンサー企業ではなく、別の会社または団体・組織などで働くケース(オフ・サイト就労)
移民局はこの基準とは別に、従来通り無差別に抽出したケースに対するサイト・ビジットも引き続き実施することを発表しています。
この移民局の発表に呼応するように、4月4日に労働省は、H-1Bビザ・プログラムによってアメリカ人労働者が差別されないように、既存の権限を使って最大限アメリカ人労働者を守ることを発表しました。また、労働省が管轄するH-1Bビザ申請で必要となるLCA( Labor Condition Application、雇用条件申請書)を、連邦政府職員、アメリカ人労働者、および広く一般の視点から、より透明性を持たせるために改定の検討をするとしています。移民局・労働省とも、H-1Bビザの不正行為をレポートできるウェブサイトを開設しています。
下院では、H-1Bビザ不正行為を減少させるための法律改正案が、民主党パスクレル議員によって提出されました。これはまだ法案の段階で法令化されていませんが、外国人を安く雇うことを防ぐために雇用主がH-1B労働者により高い給与を支払うことの義務、H-1B申請の前180日にスポンサー企業でレイオフがないこと、LCA申請のための別途の申請料金、H-1B労働者がオフ・サイトで就労する場合のペナルティ、H-1B査察の増加、違反に対する罰金・ペナルティの増加など、厳格な内容となっています。
[知っておきたい移民法]