知っておきたい身近な移民法
米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) の五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき移民法について解説します。
本コラムで提供される情報は一般的かつ教育的なものであり、個別の解決策や法的アドバイスではありません。また、情報は掲載時点のものです。具体的な状況については、米国移民法の弁護士にご相談ください。
P-3 芸術家または芸能人ビザ
外国人がアメリカで働く場合、就労ビザが必要です。就労ビザには、オファーされている役職の資格条件や、職務内容、外国人労働者の経歴や実績などによって、さまざまな種類があります。就労ビザというと、Hビザ、Lビザ、Eビザを思い浮かべる方が多いと思いますが、今回は、Pビザの中でも、芸術家または芸能人に適用されるP-3ビザ(Artist or Entertainer)についてお話しします。
Pビザは、アスリートやエンターテイナー、または彼らのサポート·スタッフが取得可能なビザです。P-1ビザ、P-2ビザ、P-3ビザと、主に3つのカテゴリに分かれています。
Pビザの適用条件
【P-1ビザ】
●国際的に認められている個人アスリート
●国際的に認められているチームのメンバーとして、スポーツ選手が評判の高いスポーツ競技に出る場合
●国際的に認められているエンターテインメント·グループ に所属しているメンバーとして、評判の高いイベントで公演する場合
個人のエンターテイナーがP-1ビザを取得することはできないため、その場合はP-2ビザ、P-3ビザ、またはO-1ビザを検討します。
【P-2ビザ】
●個人、またはグループのメンバーとして、政府より認められ たアメリカと他国間の相互交換プログラムに参加する アーティストやエンターテイナー
【P-3ビザ】
●個人またはグループのメンバーとして、文化的にユニーク なイベントへの参加を通して、公演や指導を行うアーティストまたはエンターテイナー
参加するイベントは、商業的または非商業的、どちらでも可能。政府から認められているイベントである必要もありません。
P-3ビザは、独特なパフォーマンスや伝統的な民族、民俗、文化、音楽、演劇、または芸術的な公演をしたり、あるいはその表現や解釈を教えたりすることが目的のビザです。そのため、P-3ビザを申請する外国人アーティストまたはエンターテイナーは、自身の専門分野の芸術的理解や発展を促進する文化的なイベントに参加しなければなりません。日本文化であれば、書道、茶道、日本舞踊、歌舞伎、華道、琴などが例に挙げられます。
P-3ビザを取得するには、まず、スポンサー団体·企業が、移民局に請願書を提出します。この時、スポンサー団体·企業と外国人アーティストまたはエンターテイナー間で交わされた契約書や、参加するイベント詳細の提出も必須。イベントや公演が複数の会場で行われる場合は、公演日や場所などを含めた日程も説明します。また、イベントが文化的にユニークであることを証明する書類や、外国人アーティストまたはエンターテイナーが、文化的にユニークな公演や指導が可能な専門的な技術·資格を持っていることを証明しなければなりません。適切な労働組合からの意見書も必要です。請願が認可されたら、米国大使館でP-3ビザを申請します。
アーティスト向けビザとしては、O-1ビザのほうが知名度はあります。しかし、O-1ビザは、専門分野での卓越能力を持っていることを証明しなければならず、審査基準が非常に高くなります。そこまでには及ばないものの、伝統的な芸術分野で活躍するアーティストやエンターテイナーの方々は、P-3ビザを検討すると良いでしょう。
初回のP-3ビザは、イベントに参加するために必要な期間、最長1年間の取得が可能です。更新は、イベント継続に必要な期間で、最長1年間。なお、P-3ビザはフリーランス向けのビザではありません。P-3ビザのスポンサーの下でしか合法的に働くことができませんので、雇用主が変わる場合には、新たな申請が必要です。
P-3ビザを取得したアーティストやエンターテイナーのイベントへの参加に必要なサポートを行うスタッフも、P-3ビザを取得できます。ただし、アメリカの労働者が容易に行うことができないサポートであること、サービスを実行するために必要な資格や技術·知識を持っていること、またアーティストやエンターテイナーのサポートを行った経験があることを証明しなければなりません。
P-3ビザ申請者の配偶者と21歳未満の未婚の子どもは、P-4ビザを取得可能。アメリカで共に生活し、学校に通うことができます。ただし、アメリカでの就労は不可となります。