知っておきたい身近な移民法
米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) の五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき移民法について解説します。
本コラムで提供される情報は一般的かつ教育的なものであり、個別の解決策や法的アドバイスではありません。また、情報は掲載時点のものです。具体的な状況については、米国移民法の弁護士にご相談ください。
再入国許可証(Reentry Permit)
再入国許可証(Reentry Permit) は、長期間アメリカを離れるグリーンカード(米国永住権)保持者がアメリカに再入国する際に必要となる書類です。グリーンカード保持者が永住資格を維持するためには「アメリカに永住する意思」を持ち続けていることが条件で、これはグリーンカード保持者である以上、取得後は何十年経っても同じです。しかし、さまざまな理由でしばらくの間アメリカを離れなければならない状況になることがあります。このような場合に、再入国許可証が必要になります。
再入国許可証はアメリカ国内からでのみ申請が可能なため、アメリカを出国する前に提出するという点に最も気を付けなければなりません。国外の米国大使館や領事館では申請できません。このルールを知らずに出国してしまうと、再びアメリカに戻って申請をする必要があります。なお、出国からすでに1年以上経っている場合はケースバイケースの分析が必要になるので、移民法弁護士に相談することをお勧めします。また、再入国許可証の申請はオンラインではなくペーパーのみの対応となっています。申請料金は$630で、クレジットカードかチェックで支払います。
申請提出後は、主に指紋を採取するバイオメトリクス(個人識別情報)の登録があります。日時や場所は移民局により変動しますが、申請を管轄する地域で行われます。シアトル地域では申請提出から4週間前後に予約されるケースが多いです。また、以前に採取した指紋が再利用されることも多く、その場合、バイオメトリクスは免除されます。
申請者は、移民局が申請を受理した日とバイオメトリクスの予約日は、アメリカに滞在していなければなりません。バイオメトリクスの予約日までアメリカに滞在できない場合は、移民局が申請を受理したことを確認した後に一度出国はできますが、免除されない限り、予約日に合わせて、再びアメリカに戻る必要があります。
なお、申請者のバイオメトリクスが免除されるかどうかは事前には分かりません。米国大使館や領事館では、再入国許可申請のバイオメトリクスの予約はできません。予約日に都合がつかない場合は移民局のウェブサイト、またはカスタマーサービスに電話をして日程を変更する必要があります。ただし、申請提出日から120日以内にバイオメトリクスを行わないと、申請が却下される可能性があります。
再入国許可証の平均審査期間は現在16カ月ですが、2カ月ほどで認可される場合もあれば、12カ月ほどの場合もあるので参考程度に受け止めてください。
発行された再入国許可証は、米国大使館や領事館で受け取ることができます。再入国許可証は通常、発行から最長で2年間有効です。申請回数に制限はありませんが、申請時に「アメリカに永住する意思」を失っていないことを証明しなければならないため、アメリカ国外での滞在が長くなればその分、証明が難しくなります。申請を繰り返していると、移民局の審査官の裁量で、有効期限が1年になることもありますし、状況によっては、申請が認可されないということもあり得ます。なお、条件付きのグリーンカード保持者の場合、再入国許可証の有効期限は、条件付きグリーンカードの有効期限までに限られます。
再入国許可証は、アメリカへの再入国を保証するものではありません。アメリカとの結びつきを証明する一つの要素です。アメリカ国外に滞在中でもアメリカとの結びつきを失わないよう、確定申告などグリーンカード保持者としての義務を果たす必要があります。