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アメリカでの雇用に基づく グリーンカード申請〜知っておきたい身近な移民法

米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) 五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき移民法について解説します。

本コラムで提供される情報は一般的かつ教育的なものであり、個別の解決策や法的アドバイスではありません。また、情報は掲載時点のものです。具体的な状況については、米国移民法の弁護士にご相談ください。

アメリカでの雇用に基づく
グリーンカード申請

アメリカでは、雇用に基づいてグリーンカード(米国永住権)を申請することができます。今回は、アメリカで働く外国人の多くが該当するEB-3というカテゴリでの申請の、基本的な流れをご紹介します。

雇用に基づくグリーンカード申請は、外国人労働者の能力や学歴、経歴によって主にEB-1からEB-5と5つのカテゴリに分かれています。雇用に基づくグリーンカードの年間発給数は、約14万件と定められており、さらに、カテゴリ別にも年間発給数が設定されています。

申請基準はカテゴリによって異なりますが、外国人労働者が専門分野でトップレベルに達した極少数の傑出者である場合や、能力や技術がアメリカにとって有益である場合など一部の例外を除いてスポンサー企業が必要で、該当職種(オファーされている仕事)の人材がアメリカ国内で不足していることを証明しなければなりません。

個々のケースによって多少異なりますが、アメリカで働く外国人の多くは、EB-3と呼ばれるカテゴリに該当します。このカテゴリは、学士号を持つ専門職者、もしくは最低2年の職務経験が必要な仕事に従事する労働者が対象となり、申請は基本的に次の3段階で行われます。

(1)労働認定証申請(PERM)
(2)雇用ベース移民ビザ申請
(3)グリーンカード申請

1.労働認定証(レイバー・サティフィケーション)申請(PERM)

永住権申請の第1ステップとなる労働認定証の申請は、PERM (Program Electronic Review Management) と呼ばれます。

PERM申請では、該当職種(オファーされている仕事)がアメリカ国内で人材不足していることを証明します。スポンサー企業は「求人募集活動を行った結果、アメリカ市民やグリーンカード保持者である求職者の中には適格な人材がいないこと」を証明しなければなりません。なぜなら、PERM申請の目的はアメリカの労働者を保護することだけでなく、不正な労働条件から外国人労働者を保護することでもあるからです。

そのため、まずは平均賃金(Prevailing Wage)の決定を労働省に求める必要があります。労働省は、雇用地域、特定の職種や職務内容、最低条件をもとに平均賃金を決定します。この額が、雇用主がグリーンカード取得後に外国人労働者に支払わなければならない給与額となります。スポンサーとなる雇用主は、さまざまな求人募集活動を通じて、アメリカの労働市場をテストしなければなりません。正当な求人プロセスを通して、応募者の履歴書を確認したり、必要に応じて面接を実施します。また、求人活動の内容も詳細に記録しなければなりません。求人活動の結果、最低条件を満たし、能力や意欲を持つアメリカの労働者が見つからなかった場合、雇用主はPERM申請書を提出します。このPERMを申請した日が申請の優先日(Priority Date)となります。

2.雇用ベース移民ビザ申請

このステップでは、(1)PERM申請が認可されたこと、(2)スポンサー企業が労働省に提出した最低給与額を支払う能力があること、そして(3)学士号や経験など、外国人労働者がポジションの申請条件を満たしていることを証明します。

3.グリーンカード申請

雇用を通じてグリーンカードを取得する場合、H-1Bビザと同様に年間発給数に上限があります。

年間発給数はカテゴリ別に設定されており、上限に到達したカテゴリの申請には、ウェイティング・リストが作成され、発給が翌年、またその翌年と先送り状態になります。そうなると、申請者は優先日の順番に従って、自分の番が回って来るまでグリーンカードを取得することができません。ただし、この日付は突然年単位で動いたりすることがあるので、動向に注意する必要があるでしょう。

優先日は米国務省のビザ・ブリテン(Visa Bulletin)で確認することができます。雇用ベース移民ビザ申請が認可され、グリーンカード申請における優先順位が現行になった、もしくは当局が指定する申請へ進んでよい時期になったらグリーンカードを申請します。

この申請の目的は、外国人の健康状態や犯罪歴、経済力を含む総合的なバックグラウンドの審査を行うことです。アメリカ国内で行う申請はステータス変更申請(Adjustment of Status)といい、非移民ビザ保持者(例:H-1B)から永住権保持者へステータスを変更する手続きです。アメリカ国外で行う申請は米国大使館手続き(Consular Processing)といい、アメリカ国外でグリーンカードを取得する手続きです。どちらの手続きもグリーンカードを取得することが目的ですが、申請方法や期間、料金、適用する法律が異なります。

五十畑 諭
神戸市出身。明治大学卒業。大手外資系コンピュータ会社でのシステム・エンジニア職経験後渡米。 アメリカのハートランド、カンザス州のワシュバーン大学ロースクール(法科大学院)を卒業、ジュリス・ドクター(J.D.)取得。 カンザス・ワシントン両州において弁護士資格を持つ。K&I Lawyers設立以前は、 ロサンジェルスおよびシアトルにある移民法を中心とする法律事務所での勤務を通じて、多様な移民法関連のケースの経験を積む。 カンザス州およびワシントン州弁護士協会会員、米国移民法弁護士協会会員。 6100 219th St., SW, Suite 480, Mountlake Terrace, WA 98043 ☎ 206-430-5108 FAX 206-430-5118