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外国人がアメリカで STEM関連職に就職する場合の選択肢〜知っておきたい身近な移民法

知っておきたい身近な移民法

米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) 五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき移民法について解説します。

外国人がアメリカで STEM関連職に就職する場合の選択肢

STEM はScience(科学)、Technology(テクノロジー)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)を指します。近年、新しい産業や雇用機会、イノベーションの創出において、ますます重要な分野となっています。STEM 関連職はアメリカでも需要があり、今後も高まり続けると予想されます。

ただし、外国人がアメリカで就職するにはビザが必要です。今回は、外国人がアメリカでSTEM 関連の職業に就く場合の非移民ビザ(一時的にアメリカに住み、働くことを可能にするビザ)にはどういう種類があるのか、そのオプションについてお話しします。


学生向け:F-1ビザ OPT

アメリカの大学で学士号(Bachelor’ s)、修士号(Master’s)、博士号(Ph.D.)を取得したF-1ビザ(学生ビザ)保持者は、移民局から許可を得ることによって卒業後に12カ月、学業の専門分野で実地訓練(OPT:Optional Practical Training)を受けられます。

STEMの分野で学位を取得したF-1ビザ保持者は、さらに24カ月の延長を申請できるため、通算 3 年間のアメリカでのトレーニングが可能です。

専門職向け:H-1Bビザ

H-1Bビザは、特殊技術や知識が必要とされる専門職に就く外国人労働者に適合するビザです。専門分野での学士号、または同程度の実務経験が求められます。通常、アメリカの4 年制大学を卒業した外国人に利用されることが多く、海外で学士号を取得している、 あるいは同程度の実務経験がある外国人労働者も対象となります。職歴のない新卒者でも申請可能ですが、その職務内容が専門分野での学士号以上の学位取得を最低条件とする専門職であることを証明しなければなりません。

会計年度(10月1日から翌年 9月30日まで)におけるH-1Bビザの新規発給数には限りがあり、これをCAPと呼びますが、現在は一般枠が 6 万 5,000 件、特別枠(アメリカの大学で修士号以上の学位を取得した人) が 2 万件と定められています。毎年、申請開始直後に年間発給数の上限に到達してしまっている状況のため、前述の3 年間のOPTがあっても最終年まで待たず、H-1B申請を試みる場合がほとんどです。なお、条件によってはCAPの対象にならないケースもあります。

卓越した能力保持者向け:O-1ビザ

科学・芸術・教育・ビジネス・スポーツの分野で、卓越した能力を持っている外国人に適合するビザです。専門分野で博士号を取得し、その活躍や実績が国内外で認知されていることを証明できれば申請可能です。初回は最長 3 年まで、その後は1 年ごとに、申請基準を満たしていれば制限なく延長できます。

年間発給数の上限がないこともあり、滞在期間に制限のあるH-1BビザではなくO-1ビザを選択するケース、あるいはH-1Bの有効期限満期になる前にO-1ビザに切り替えるケースもあります。H-1Bビザよりも断然申請条件が高いものの、申請基準を満たすことができれば有効なオプションです。

国際企業内転勤者向け:L-1ビザ

国際企業がアメリカの関連会社に社員を派遣する際に適合され、重役・管理職者はL-1Aビザ、特殊技術・知識保持者はL-1Bビザとなります。しかし、海外で重役・管理職者、または特殊技術・知識保持者としての勤務実績が最低 1 年必要です。また、海外で勤務していた会社が、アメリカの会社の関連会社(支社、子会社、親会社、合併会社など、共通の所有関係にある形態)であることが条件ですので、新規の雇用には適応しません。

投資家向け:E-2ビザ

E-2ビザは投資条約が基盤となって発給されます。日本も米国と通商・投資条約を交わしているので、日本人はEビザを申請することが可能です。少なくとも申請する会社の 50%を申請者と同じ条約国の市民もしくは会社が所有していることが条件となっています。また、管理職か重役職に就く、あるいは企業の運営に必要不可欠な専門的知識・技術を持っていることも条件です。申請条件として直接明示されているわけではありませんが、就労経験がない新卒者の場合、実際に申請するのは難しいと考えられています。


以上が、一時的にアメリカに住み、働くことを可能にする非移民ビザのオプションですが、STEMの分野で働く方の多くが最終的に検討するのが、移民ビザ(米国永住権:グリーンカード)の取得です。グリーンカードを取得することによって、永久的にアメリカに住み、働くことが可能になります。

神戸市出身。明治大学卒業。大手外資系コンピュータ会社でのシステム・エンジニア職経験後渡米。 アメリカのハートランド、カンザス州のワシュバーン大学ロースクール(法科大学院)を卒業、ジュリス・ドクター(J.D.)取得。 カンザス・ワシントン両州において弁護士資格を持つ。K&I Lawyers設立以前は、 ロサンジェルスおよびシアトルにある移民法を中心とする法律事務所での勤務を通じて、多様な移民法関連のケースの経験を積む。 また、移民法以外の分野、特に家族法、遺言・検認・遺言状執行、会社設立、その他民事訴訟にも精通する。カンザス州およびワシントン州弁護士会会員、 米国移民法弁護士協会会員。移民法関連のトピックにおいて、たびたびセミナーを開催。 6100 219th St., SW, Suite 480, Mountlake Terrace, WA 98043 ☎ 206-430-5108 FAX 206-430-5118