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第17回 日本の年金加入期間が足りなくても「カラ期間」と外国年金通算でカバー〜今から考える日本への永住帰国

今から考える日本への永住帰国

現在はアメリカに住んでいるけれど、いつかは日本に戻りたい! そんなあなたに役立つ知識を、日本帰国支援のエキスパートが提供。

日本の公的年金(厚生年金、国民年金)の受給開始年齢は65歳です(一部例外あり)。すでに受給中の人もいれば、今後受給予定の人もいると思います。今回は将来的に日本の年金請求手続きを行う場合に海外在住者が知っておくと役立つ「カラ期間」と、外国年金通算について紹介します。

年金の受給資格要件と海外在住者への例外措置

日本の年金は老後の受給資格要件として10年(=120カ月)の加入期間(毎月の年金保険料納付期間※1)が必要です。もともとは25年(300カ月)でしたが、2017年から10年に短縮されました。海外在住者はその間、日本の年金に加入していなくても、「カラ期間」または「合算対象期間」と呼ばれる海外在住期間 ※2や、居住国の公的年金加入期間(米国ではSocial Security、以下SS)加入期間 ※3を通算(合計)することができます。

たとえば日本の年金に7年加入した後、米国へ移住するケースを考えてみましょう。日本の年金加入期間の7年だけでは10年の資格要件を満たしていません。ただし、その後米国で3年以上居住するか、または就労してSS税を納付すれば、日米の期間を合計して10年にできるため資格要件を得ることになります。

つまり、老後に日本の年金の請求手続きをする際、日本の年金加入期間が10年に達していない場合でも、このカラ期間または外国年金加入期間を証明する書類の提出により、年金が受け取れるわけです。※4

証明書類の準備

日本の年金請求手続きでカラ期間および米国居住者のSS加入期間を証明するには、以下の書類が必要です。

●カラ期間の証明

①戸籍の附票

本籍地住所の履歴を記載する公文書で、本籍地の市区町村役場で取得します。渡米時に転出届を提出するとその海外転出日(住定日)が記載されます。転出届を提出していない場合は記載がないので利用できません。

②出入国記録

日本の出入国日が記録されたもので、法務省出入国在留管理庁にて取得できます(窓口または郵送)。①の戸籍の附票に海外住定日が記載されていない場合に提出します。

③日本のパスポート(コピー可)

パスポートに日本出国・帰国の日付がスタンプ(証印)される※5ので、そのコピーを提出します。渡米時から60歳までの期間を含む過去全てのパスポートが必要です。①、②を取得したものの海外居住期間が証明できなかった場合に提出します。

●米国年金加入期間の証明

④SSカードまたはステートメントのコピー

氏名とSS番号がわかるものだけあれば、日本年金機構が米国社会保障局(Social Security Administration、以下SSA)へ米国年金加入期間を照会します。

審査手順

日本年金機構がこれら通算期間を審査する場合、前述の書類を①~④の順に確認します。そのため、まず①を取得し、ここに海外住定日が記載されていない場合は②を入手して提出することになります。大体のケースではこの時点で日本出国時期(=海外渡航日)が判明していますが、当時のパスポート番号がわからないなどの理由で記録が見つからなかった場合、③のパスポートにより審査が行われます。

パスポートは日本出国時から60歳までの間で1冊でも紛失していると利用できません。パスポートがそろわない場合は、米国年金の通算を利用するため、④を提出します。また、②の入手が困難な場合は、④による米国年金加入期間を証明する方法での請求も可能です。

海外在住者が日本出国時に海外転出届を市区町村役場へ提出しないと、①に海外住定日が記載されず、たとえ海外に居住していても「日本に居住」と判断されます。その間は、日本で年金保険料を支払っていない(保険料未納)と見なされるので、カラ期間の扱いにはなりません。日本年金機構では数年前まで、そうした場合でも②や③があればカラ期間と見なしていましたが、最近は認めなくなりましたので注意が必要です。カラ期間が認められずに年金加入期間が足りない場合は、④の方法で請求します。

海外在住者が留意すべき点

前述の通り、年金請求時にカラ期間を証明するためには戸籍の附票に海外住定日が記載されている必要がありますが、手続きがあまり認知されておらず、届出をしていない人もいます。こうした人は今からでも構いませんので、転出届を提出すると良いでしょう。ただし、カラ期間が認められるのは、60歳未満の人のみです。

また、米国公的年金の加入証明を提出する場合、日本年金機構からSSAへ記録の照会を行いますが、これによって日本の年金受給がSSAの知るところとなります。WEP(外国年金受給による米国年金の減額制度)の対象者であることが判明してしまうことをお忘れなく。※6

以上、かなり専門的で細かな内容となりましたが、よくわからない場合は弊社まで個別にメールなどでお問い合わせください。

※1:保険料免除期間を含む。

※2:60歳未満の日本国籍のみ。外国籍を取得すると対象外となる。

※3:米国など日本と社会保障協定を締結している国に限る。

※4:老齢厚生年金受給者が死亡した場合に支給される遺族厚生年金の場合は加入期間が25年(300カ月)必要。

※5:空港の自動化ゲートを利用して入国した場合、各審査場で職員に希望する旨を申し出ない限り、スタンプは省略される。

※6:対象者の一部は米国年金の規定により米国年金が減額に。


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蓑田 透
(株)ライフメイツ/ライフメイツ社会保険労務士事務所代表。米国を始めとする海外在住者の年金申請、相談サービスを多数手掛ける。またファイナンシャルプランナー、米国税理士、宅建士として日本への永住帰国時および帰国後の生活のサポートや、海外在住者向けに日本の老親の終活に関する支援を行う。 (株)ライフメイツ ☎213-327-8650(北米) ☎03-6411-8984(日本) www.life-mates.jp