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歌舞伎研究家と日本舞踏家による伝統文化の講演

山帰り

4月20日、ワシントン大学ミーニーホールにて、日本舞踊家で文化庁文化交流使の藤間蘭黄(ふじまらんこう)氏が、歌舞伎研究家・翻訳者のマーク大島氏と共に講演会を開催した。同イベントは三菱商事レクチャーシリーズとして、在シアトル日本国総領事館との共催によって実現したもの。

満席になった会場では、『山帰り』と東明流『都鳥』の二つの演目が披露された。『山帰り』は、江戸時代に若い男性の間で流行した「大山詣(おおやままいり)」を題材にしている。色鮮やかな小道具と衣装で登場した蘭黄氏が、大山詣をする火消しを演じた。東明流『都鳥』は、伊勢物語で京から左遷された在原業平が詠んだ「都鳥の歌」をもとに懐古する哀愁の物語だ。蘭黄氏はシンプルな袴と扇子で「素踊り」を魅せた。

▲傀儡師

各演目の前には、歌舞伎研究家・翻訳者のマーク大島氏の解説に合わせて、蘭黄氏が日本舞踊の動きを実演した。「日本でも海外でも、歌詞や物語を体現する上で、ひとつひとつの動きを丁寧に、大きく表現することで観客に伝わりやすくなるように心がけている」と蘭黄氏は言う。本公演では傀儡師(かいらいし)の一部を、蘭黄氏の舞に、大島氏の英語歌詞による三味線演奏をあわせるという初の試みもあった。伝統芸能を日本国外へ伝えている二人のこの共演に、観客も大いに沸いた。

▲都鳥

日本舞踊では、男性が女役を演じることもあれば、その逆もあり、話の途中で演じる性別が変わることもある。幼いころから男役も女役も演じ、それぞれの所作を習ってきた蘭黄氏は、容易に男女の演じ分けができるという。本公演の『山帰り』と『都鳥』でも、男役と女役の入れ替わりを見ることができた。演者が一人という空間で役を演じ分け、観客を物語に引き込む表現力と存在感は圧巻であった。

取材・文・写真:吉田雛子