コロナ禍で刻々と変わる状況に翻弄(ほんろう)される留学生たちがいます。シアトルでオンライン授業から対面式授業へ切り替わる学校が増えている中、不安や戸惑いを感じる学生も。ワシントン州内の留学生ふたりに話を聞いてみました。
取材・文:市村登祈子
新型コロナウイルスの感染予防のため、オンライン授業を1年以上続けてきた留学生たち。ウエスタン・ワシントン大学に通うベトナムからの留学生、T.H.さんもそのひとりだ。ワシントン州内のコミュニティー・カレッジを卒業後、今年1月から編入生として新しいスタートを切った。
「正直、感染のリスクを考えると、オンライン授業のほうがより安全な選択肢だと思う」と前置きしつつ、対面式授業の利点もあるとT.H.さんは話す。友だちと実際に会って遊べる、社会とのつながりが増える、スケジュール管理や情報へのアクセスが容易になる、などだ。逆に欠点は、もし感染した場合に健康と学業の両方にダメージがある、その日の天候や学校への交通手段によっては不便なところだと言う。オンライン授業の期間は、クラブに入ってオンライン・イベントに参加したり、同じオンライン授業を取っているクラスメートと連絡先を交換したりして友だち作りをしたそう。
ワシントン州内のコミュニティー・カレッジで勉強するナイジェリア人留学生、R.G.さんも今年の新学期から対面式での受講を開始した。オンライン授業とどちらが良いかは、科目によるとしている。「対面式授業では、ほかの学生と交流できるのがメリット。オンライン授業では、予定が立てやすいところがうれしいですね」
オンライン授業であっても、IPクラス(全留学生が最初の学期に取る単位のない授業)やクラブで友だちをたくさん作ることができたと話す。「もちろん、対面式の授業では教授やほかの学生たちと、より交流を深められるのは良いところ。だけど、朝早く起きる必要があるのは難点かな」
ほかの学生たちの声を聞いても、2年前のパンデミック宣言直後と比べ、留学生の心境に変化が出てきたと感じる。学校側も学生側も手探りの中で始まったオンライン授業は、今や当たり前のスタイルとしてすっかり定着した。朝、眠たい目をこすりながら登校する日々にも、またすぐに慣れるのであろう。やはり、人の順応力というのはすごいものだ。