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人間が生命をつくり出すことが可能になったら?『ブレードランナー 2049』

上映時間2時間43分<br >写真クレジットWarner Bros Picture<br >シアトルではシネコンにて3D2D両バー ジョンで上映中

2度見たが、人間の未来への多くの問いかけを含んだ知的かつ詩的な作品で、まだまだ観足りない感覚が残った。映画好きを熱くさせる映画史に残る傑作と呼びたい。 1982年、フィリップ・K・ディックのSF小説『アンドロイドは 電気羊の夢を見るか?』を原作とし、「エイリアン」で注目を浴び たリドリー・スコットが監督したSFの名作「ブレードランナー」。 本作はその続編だ。

前作の舞台は酸性雨が降り、終末感漂う2019年のロス。奴隷労働を担うために造られたレプリカント(人造人間)の反乱を追うブレードランナーと呼ばれる刑事を主人公に、人間と人造人間をめぐる物語が展開する。超未来的セットデザインと斬新な映像、加えてハードボイルドな語り口のSFらしからぬフィルム・ ノアール作品で、公開後にジワジワと熱狂的なファンを獲得したきたカルト映画の代表作である。

そして35年、前作の世界観を裏切らない作品を期待されたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の荷は重かっただろうと思うが、出来栄えは前作以上。15年の「ボーダーライン」、16 年の「メッセー ジ」と立て続けに見応えのある作品を発表しているヴィルヌーヴ監督の代表作のひとつと言える。

写真クレジットWarner Bros Picture

本作の舞台は2049年。人間への服従がプログラムされた新型のレプリカントのK(ライアン・ゴスリング)はロス警察に所属するブレードランナー。そんな彼が旧型レプリカントのリタイア(処分)を終えた場所で、ある骨を発見する。調べると帝王切開痕のある女レプリカントの骨と判明。あり得ない事実に驚愕した上司(ロビン・ライト)はこの事実を隠し、生まれた子をリタイアさせるよう命じる。製造ではなく生まれたレプリカントのリタイアに抵抗を感じるKだが、遺体の製造番号を調べ、その女が 30年前にブレードランナーだったデッカード(ハリソン・フォード)と恋愛関係にあったことを突き止める。

写真クレジットWarner Bros Picture

無理なく物語を前作とつなげながら、Kの心を捉えた大きな疑問を次第に膨らませていく展開に引き込まれる。だが、本作のテーマは人探しや謎解きにあるのではない。人間が生命をつくり出すことが可能になったときに何が起こるのか。人間の抱く尊大な野望とレプリカントに芽生える自己認識。自分は何者なのかと自問を始めるKの存在が暗示する、人間を人間たらしめる 要素についての深淵な問いかけが心に残った。 映像、音楽共に圧倒的な素晴らしさで、ぜひ映画館の大スク リーンで濃密な映画体験をして欲しい。

[新作ムービー]

土井 ゆみ
映画ライター。2013年にハワイに移住。映画館が2つしかない田舎暮らしなので、映画はオンライン視聴が多く、ありがたいような、寂しいような心境。写生グループに参加し、うねる波や大きな空と雲、雄大な山をスケッチする日々にハワイの醍醐味を味わっている。