Home 観光・エンタメ シニアがなんだ!カナダで再出発 白内障の手術で明るくなった...

白内障の手術で明るくなった世の中?

数年前から白内障があると言われていたものの、BC州保険制度との関係か、手術は私が「ready」になるまで待つと眼医者が言う。その間も徐々に視力が弱り、特に左目で見るものの色が薄く黄色っぽくなり、ついには白黒映画をみているような時さえあった。マイナス10の近視用メガネをかけるまでになっていた左目は、マイナス1の右目と極端な差があるため、メガネをかけても立体感や奥行きがつかめず、駐車などにも苦労していた。いよいよかなとGP(一般開業医)に相談、眼科医とのアポを取ってもらってついに、まずは左目の手術をすることになった。

手術をしたシアトルの友人は経過が良くないと言っていたが、バンクーバー周辺に住むシニアたちはみな「手術は至極簡単、よく見えるようになった。早くやってしまいなさい」と励ます。運が良いのか悪いのか、我が眼科医は手術の第一人者。予約は1年後に予定されたが、5カ月経った頃に他の予約のキャンセルが出たとの知らせがあり、7月に決行されることになった。

日程が決まると目のサイズや視力を図る簡単なアポがあり、過去に網膜裂孔の手術を数回受けた自分の今回の手術との適応性も確認され、準備完了。手術の1週間前に、目薬を2種類買っておくようにと言われた。

手術日の朝、手術室にチェックインすると担当の看護婦が不安げな私に優しく応対してくれる。私の心配が分かると、麻酔医が来て精神安定剤を舌の下に放り込む。これが効いたのかすぐに気分がハイになる。看護婦が瞳孔を開かせる目薬をはじめ半ダースほどの点眼液を次々と目に注ぎ、やがて手術開始。

手術椅子に座ると顔全体が覆われ左眼のみ露出、まぶたが固定され目の周りが丁寧に消毒される。こうなればもう「まな板の鯉」、心配している余地はない。コンピューターに従って医師が目を外側からいじっていく。さらにどくどくと目薬がさされ、まるで水中を泳いでいるよう……と十数分が経過しただろうか、「ハイ終了」の合図で眼帯をはめられて待合室へ。ピックアップを頼んでおいだ友人に自ら電話をかけた。

目の周りは何となく不快に感じる以外、特に痛みはない。翌朝、眼帯を外していざ目を開けると「うわーっ」。外がまぶしくて真っ白! まるで町中が漂白されてしまったかのようだ。輪郭はまだはっきりしないが、確かによく見える。翌日医者にチェックしてもらって異常なし。

だが、その夜から目の奥が痛み出した。翌朝電話して診てもらうと眼圧を下げる目薬が追加され、服用半日ほどで痛みは消えた。そして1週間後のアポで視力が20/25までに回復。さらによくなるだろうと言われ、現代医学に感謝感激。こんなによく見えるようになるのなら右目もすぐにやってほしい、と医師に言うと予約を取ってくれたものの、例によって手術は7カ月待ちとなった。ちなみに手術にまつわる費用は目薬3種類(合計100カナダドル以下)のみで、あとは州の保険がカバーしてくれた。カナダさん、ありがとう。

[カナダで再出発]

武田 彰
滋賀県生まれの団塊世代。京都産業大学卒業後日本を脱出。ヨーロッパで半年間過ごした後シアトルに。在シアトル日本国総領事館に現地職員として39年間勤務。政治経済や広報文化などの分野で活躍。ワシントン大学で英語文学士号、シアトル大学でESL教師の資格を取得。2013年10月定年退職。趣味はピックルボールと社交ダンス。