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ザ・トーキョー・ハッピー・コーツ ~ニッポンの歌を探して Vol.4

晴歌雨聴 ~ニッポンの歌を探して Vol.4

日本のポピュラーカルチャー、特に1960-70年代の音楽について研究する坂元小夜さんが、日本歌謡曲の世界を案内します。

第4回 ザ・トーキョー・ハッピー・コーツ

日本ではほとんど知られていませんが、1960年代にアメリカで活躍した日本人女性5人組のバンドがいます。バンド名はザ・トーキョー・ハッピー・コーツ(The Tokyo Happy Coats)。そう、ハッピーと半被(はっぴ)をかけているようです。残っている資料がほとんどなく、詳しいことはよくわかっていません。

アルバムレコードは2枚あり、いずれも1970年代の前半にアメリカでキングレコードから発売されています。そのうちの1枚のジャケット写真は、スパンコールの衣装に、髪を大きく膨らませたレトロなヘアスタイルの5人の日本人女性が、なんと金閣寺の前に並んでいます。いやはや和洋折衷なアイデアです。ちなみに、彼女たちは姉妹ということになっていて、レコードのジャケットにはハコモリ・エイコ、ケイコ、ショウコ、トミコ、ルリコとクレジットされています。

レコードを発売する10年ほど前からアメリカ各地のクラブを演奏して回っていたとあるので、少なくとも1960年代の前半から活動していたと思われます。しかも、このハコモリ姉妹は26種類もの楽器を使いこなし、ツアーの際は荷物が44個にもなったとか。肝心のパフォーマンスはと言うと、歌唱力や演奏が並外れているわけではないのですが、ショービジネスで鍛え上げただけあって、聴く人を楽しませる勘所をよくつかんでいます。ヒット曲のカバーを自ら演奏して英語で歌う日本人の5人姉妹がアメリカで珍しがられたであろうことは容易に想像がつきます。

彼女たちは1966年に、ジャッキー吉川とブルー・コメッツやザ・ピーナッツなども出演したアメリカの人気バラエティー番組「エド・サリバン・ショー」に出演しています。その映像を観たことがありますが、いわゆる音楽バンドと言うよりも、エンターテイナーと言ったほうがふさわしい、こなれたステージ・パフォーマンスという印象。司会者のエド・サリバンとのやり取りも流暢な英語でこなしていて、いったい何者なんだ?と、不思議に思わずにはいられません。

この5人姉妹はどういう経緯でアメリカのショービジネスの世界に飛び込むことになったのでしょうか。レコードのジャケットにある情報では、1970年代のリリース時点で母親が日本に住んでいるとあります。ハコモリ姉妹はアメリカで育った? それとも日本から移住? いつか、このミステリアスな5人姉妹のストーリーを深く探ってみたいものです。

坂元 小夜
横浜生まれ東京育ち。大学院進学のために2015年に渡米。2020年よりロサンゼルス在住。南カリフォルニア大学大学院の博士課程にて日本の戦後ポピュラー文化を研究。歌謡曲と任侠映画をこよなく愛する。