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第45回 沖縄の味 ー ハイケイ〜みきこのシリメツ、ハタメーワク

第45回 沖縄の味 ー ハイケイ

娘婿が沖縄の農家でアルバイトをしている。ヤギの世話をしたり、時々新鮮な卵を持って帰ってくる。プリプリの生卵かけご飯を絶賛しているが、最近は持ってこない。なぜだか聞いてみると、雌鶏は2年くらい卵を産むとおしまいだそうだ。

「で、どうするの?」

と、娘がびっくりして聞くと、

食べるのさ」

と言う。子育て真っ最中の娘には言葉が出ない。

「それが運命なんだよ」

などと会話している。そのまま生かしておくより、美味しく食べてあげた方が幸せなのかな? と考えていると、40年も前の借家の大家さんを思い出した。

ポートエンジェルスから8マイルほど西の雑木林の中のトレーラーハウス。同じ敷地に自作の池付きの家があり、犬2匹のほか鶏10羽ヤギ3匹ガチョウ1群れと暮らす40代ドイツ人のオバサンだ。小さな果樹園もある。

家畜には名前が付けられ、ペットのように大切に育てている。黒茶色のヤギのアメリアは呼ぶと駆けて来るし、乳を絞って作ったヨーグルトに、庭のラズベリーを混ぜて時々持って来てくれた。ガチョウの大将、ジョージは私にほれ込んでいるようで、ジーンズの裾や靴ひもをカミカミして寄り添い、夫が来るとすごい勢いで、グワッ、グワッと、かみつきそうに追い払っていた。

ある晩、ゴミを外に出しに行った夫の叫び声で外に出ると、アメリアの頭がゴミ捨て場にある。慌てて大家さんに連絡すると、以前は埋めていたんだが、どうせコヨーテに持って行かれるのだからそのまま置いた、と言う。家畜は時期が来たら食べ物になる、と言うのが宿命で、それまではペットのように大事に育てるが、これは食物連鎖なのだそうだ。 秋になった。私の「恋人」ジョージが見当たらないので聞いてみると、

「ああ、彼は夕べの食卓に乗ったわ」

そうか、感謝祭だったのだ。

所は変わり、沖縄の桜祭り。屋台で沖縄料理がいろいろ食べられる、とウキウキして物色していると、「ハイケイ」が目に留まった。チキンだと言う。

「ハーイ、生まれて初めてのハイケイ! おいしいよ」

大声と拍手ではやし立てられて、食べてみるとコリコリして、砂肝のように一寸硬めのチキン。味は沖縄風で、塩、しょうゆ系でいい味している。ビールに合うだろうなぁと微笑みながら食べて、ふと思った。もしかして、「ハイケイ」は、「廃鶏」? 卵を産まなくなった雌鶏なのか。美味しく食べてるから、成仏してね。

天海 幹子
東京都出身。2000年から2005年まで姉妹紙『北米報知』ゼネラル・マネジャー兼編集長。「静かな戦士たち」、「太平洋(うみ)を渡って」などの連載を執筆。2020年11月に日本に帰国。同年、著書『ゼッケン67番のGちゃん』を刊行。