審美的医療の分野で「シワ取り治療」として普及が進んでいるボトックス(botox)ですが、徐々に歯科での応用も進んできているようです。今回はボトックスの歯科における応用について書いていきます。
ボトックスとは?
A型ボツリヌス毒素には、筋肉の伝達物質であるアセチルコリンの働きを弱める作用と、筋肉の収縮を弱める働きがあります。その結果、美容の分野ではシワをなくす働きがあるのです。
ボトックスの効果の持続期間;
注入後、約2週間で効果が出てきて、効果は4〜6カ月持続すると言われています。反復施術することにより、持続時間が延長されます。しかし、逆に考えると注射を止めるとシワ取り効果は元に戻るので、決断する前によく考える必要がありそうです。また、シワと言っても筋肉の過剰な収縮によるシワは改善できますが、それ以外が原因のシワ(皮膚のゆるみなど)には効かないので注意が必要です。この他、シワ取りの他にボトックスが有効な症例として、偏頭痛(側頭筋などの過剰な筋肉の収縮を緩和することによる)、エラの張り(咬筋の過剰な発達を抑制)などに有効とされています。
歯科での応用
1.顎関節症の軽減;偏頭痛の緩和と同様のメカニズムで顎関節周囲の筋肉の過剰な収縮が痛みや開口障害の原因になっている場合、ボトックスが効力を発揮すると言われる。また過剰な歯ぎしり、食いしばりでをボトックスで軽減することができるとされる
2.笑うと歯肉が露出する;口の周りの筋肉の働きを抑えることで、いわゆるガミーフェイスが改善することが期待できる
ボトックスの副作用;
ボトックスは比較的安全な治療とされていますが、以下のような副作用が出ることがまれにあるようです。
1.眼瞼下垂;ボトックスが目を動かす筋肉に作用してしまうと起こり得るので、注射部位には注意
2.複視;眼瞼下垂に似たメカニズムで眼を動かせる筋肉の動きにアンバランスが生じ、物が二重に見えることがまれに起こる
3.内出血による青あざ;注射による内出血。血液凝固阻害剤を服用している患者は特にに注意が必要
4.新たなシワ;ボトックスの量が多すぎるとその周囲にシワができることがある
5.アレルギー反応;過敏反応
ボトックス治療が行えない方
下記の患者さんはボトックスの安全性が確保されていないので、使うことができないとされています。
1.妊婦;安全性がまだ確立されていない
2.ボトックスに過敏症のある方
3.全身性の神経筋接合部の障害を持つ方(重症筋無力症等);症状を悪化させる可能性がある
まとめ
ボトックスを治療に使っている歯科医院はまだ多くはありません。しかし、顎関節症やガミーフェイスの治療に効果を上げ、注目されています。
[健康な歯でスマイルライフ]